「中国は確実に台湾に侵攻する」前統合幕僚長が警鐘 沖縄の海が戦場と化す?
世界で最もキナ臭い地域
冷戦終結から32年を経て、世界の安全保障環境は大きく様変わりした。冷戦下における世界的な安全保障の最前線は、米国を中心とする北大西洋条約機構(NATO)と、ソ連を中心としたワルシャワ条約機構とが対峙するラインだった。
政治的にはドイツを東西に分断したベルリンの壁であり、軍事的には旧東西ドイツの国境に面していたフルダ峡谷であった。ここは東側が侵攻する際の経路と見なされ、軍事戦略的に最も重要な地域とされていた。
ところがいまや、「最前線」は第1列島線に取って代わった。中国が統一を目論む台湾と、挑発を繰り返す尖閣諸島の周辺こそが、世界で最もキナ臭い地域と化しているのだ。
親日国として知られる台湾と、そのすぐ手前に連なる自然豊かな沖縄の島々、それらを取り巻く美しい海が一触即発の状態にある。その事実は、いまだ多くの日本人には「聞耳(ききみみ)遠し」かもしれない。しかし、これが安全保障の現実だ。日本は戦後76年を経て、好むと好まざるとにかかわらず、冷戦時代の西ドイツと同じ位置に「立っちゃった」のである。理由は明らかで、同盟国のアメリカが中国を“脅威のナンバー1”に据えたからにほかならない。
ちなみに、私が「立っちゃった」と表現するのには理由がある。世界が注視する安全保障の最前線に日本が「立たされた」というのでは、国家としてあまりに自覚に欠けているようで情けない。かといって、いまの日本が自身の立場を自覚し、「立っている」と胸を張れるだろうか。冷徹な国際政治の現実を理解し、来(きた)るべき事態に向き合う覚悟を持っているだろうか。それを思うと、やはり「立っちゃった」との表現が適切に思うのだ。
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