おかえりモネ終了 ラスト3話で未知の衝撃の告白…朝ドラの常識をことごとく覆す安達ワールドとは
幼なじみからの冷ややかな言葉
モネは体にハンデのある車椅子マラソン選手の鮫島祐希(菅原小春、29)ともつながった。心に深い傷があり、人前に出られぬ「汐見湯」の宇田川ともつながる。2人が登場したのはもちろん必然だろう。この物語は生きとし生けるものの共生を静かに呼び掛けていた。
モネは高校卒業後の5年半で、さまざまな人たちとつながり、医師・菅波光太朗というフィアンセも得て、2019年11月に帰省する。目的は「地元の役にたちたいから」。地元の人たちとつながるためでもあった。
だが、うまくいかない。モネの自宅での飲み会では幼なじみの亮(永瀬廉、22)から冷ややかな言葉を投げ掛けられてしまう。第98話でのことだ。
「地元のために働きたかった? ごめん、綺麗事にしか聞こえないわ」(亮)
亮は地元で漁師として過酷な日常を送っていたから、犠牲心がにわかには信じられなかったのだ。それはモネにも理解できたから、感情的にならず、後から詫びた亮に「分かってる」とうなずいた。
地元漁協の人たちの理解を得るのも一苦労。なかなか信用が得られなかった。山や都会の人とつながるのと同じだけの努力が必要だった。
ただし、それらはモネにとって二の次のこと。なにより、やらなくてはならなかったのは妹の未知(蒔田彩珠、19)と再びつながることだった。
忘れられない妹とのシーン
モネは東日本大震災の日、仙台青葉学園音楽コースの合格発表を見に行っていたため、島を離れていた。これが姉妹の間に亀裂を生む。未知が中1の時である。
震災から半年が過ぎても気落ちしている未知に対し、モネが「また普通に戻れるよ」と励ましたところ、睨みつけられた。
「戻れるとか、よく簡単に言えるね。お姉ちゃん、津波見てないもんね」(未知)
第20話の回想シーンだ。モネは愕然とする。自分は島にいてはいけない人間なのだと思い込む。だから登米に出た。
安達奈緒子さんの脚本は言葉の一つ一つが美しい。だが、全体を読み解くのは簡単ではなく、まるでパズルのよう。
モネが帰省後の第118話、未知が震災時のモネの不在を恨んでいる本当の理由が分かった。未知が告白した。
「私、おばあちゃん(雅代=竹下景子、68)置いて逃げた」
雅代はどう言おうが動いてくれず、やがて海が迫ってきたため、未知は逃げた。
震災時の極限下だから、誰も未知を責められない。だが、未知を激しく責めていたのは、ほかならぬ本人だった。
ラストから3話前に物語を複雑化させるのだから、安達ワールドはまさにパズルである。
だが、このパズルに限ると、翌119話に素早く解かれた。モネが「ミーちゃんは悪くない。絶対に悪くない」と繰り返し力強く語り掛けたのである。まるで子供をあやすように。
未知は泣きじゃくり、モネに抱きついた。安堵しただろう。姉妹は震災前の関係性を取り戻す。
このシーンには安達イズムが鮮明に表れていた。いくら時代が進化しようが、人を癒やせるのは人だけ。第66話で打ちひしがれていた菅波光太朗を癒やしたのもモネの手だった。
菅波は研修医のころ、胸を病んでいたホルン奏者・宮田(石井正則、48)の診断を誤り、彼の音楽家人生を台無しにしてしまう。未知と同じく、激しい罪悪感に襲われた。
菅波がその痛恨の過去を告白している間、背中をさすり、慰めてくれたのがモネだ。
「人の手というのは、ありがたいものですね……」(菅波)。
2人の交際が始まったのは第80話。その前のことだった。
朝ドラの常識をことごとく覆した作品でもあった。その1つは見る側に想像力を要求するから、時報代わりにならなかったところ。説明調のナレーションもほとんどなかった。
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