森田芳光監督 生誕70年で人気再燃 ライムスター「宇多丸」が語る”色褪せない作品の魅力”

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宇多丸さんと“チラシ”

 筋金入りの大ファンだけあり、宇多丸さんはラジオや雑誌などで森田作品の魅力については何度も言及してきた。だが、不思議なことに当時は縁がなく、監督と会うこともなかったという。

 事態が動き出したのは2012年。森田監督の1周忌にちなみ、ムック「森田芳光祭 全員集合!モリタ監督トリビュート!」(ぴあ)が出版された。その企画で、ヒップホップグループ「RIP SLYME」のMC、RYO-Zさん(47)と宇多丸さんの対談が行われたのだ。

 森田監督は、2005年の「間宮兄弟」(アスミック・エース)と、2012年の遺作「僕達急行 A列車で行こう」(東映)の2作品で、主題歌をRIP SLYMEに依頼している。

 対談の会場には三沢プロデューサーも同席していた。すると宇多丸さんが森田作品のファンだったことや、持参した資料の量、何よりも溢れる“森田愛”に驚愕するという一コマがあったという。これで縁が生まれた。

 2014年、宇多丸さんは佐賀市の映画館から求められ、自身が選んだ「の・ようなもの」、「ときめきに死す」(ヘラルド・エース、にっかつ)、「メイン・テーマ」(東映洋画)の3作品を6月から8月にかけて上映。更にトークショーも開催した。

 その際の宣伝チラシに3作品を紹介する文面を考えたのだが、これも三沢プロデューサーの目に留まった。

大盛況のトークショー

 決定打となったのは2017年。浅草公会堂で「第10回したまちコメディ映画祭in台東」が開かれ、森田監督の「そろばんずく」が公開されたことだ。

「僕は『そろばんずく』がずっと好きでしたけど、一般的には失敗作、無茶苦茶な映画と評価されていました。ところが上映してみると、会場は爆笑に次ぐ爆笑でした。僕のラジオ番組とコラボした企画だったので、笑いのツボが同じというお客さんが多かったのかもしれません。会場の盛り上がりが嬉しくて、三沢さんに『「そろばんずく」でもこんなに成功するなら、全作品、この調子でいけるんじゃないですか』とぽろっと言ったんです。すると三沢さんがすかさず『いいね!』って反応したんです」

 名プロデューサーは決断すると早い。宇多丸さんが「機関車の如く」と振り返る勢いで企画は実現化し、2018年に池袋の新文芸座で全作品の上映が行われた。

「当初から何らかの形で書籍にしようという案はありました。ただ、僕の最初の想定は新書とか、もっと手軽なイメージでした。ところが上映会を始めてみると、盛り上がりが凄いんです。観客のリピーターも増えるし、スタッフや出演者の方々も自主的に駆け付けてくれる。回を重ねるごとに貴重な証言が積み重なって、『これは我々、大変なことをしているんじゃないだろうか』という手応えが出てきました」

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