森田芳光監督 生誕70年で人気再燃 ライムスター「宇多丸」が語る”色褪せない作品の魅力”
1983年の「家族ゲーム」(ATG)、97年の「失楽園」(東映)、2003年の「阿修羅のごとく」(東宝)と、数々の傑作、ヒット作、話題作を撮り続けた映画作家・森田芳光監督(1950〜2011)の生誕70周年が盛り上がりを見せている。
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森田監督は1950年1月生まれ。C型肝炎が持病だったと報じられたこともあり、2011年12月に急性肝不全で死去した。享年61と、あまりに早い死だった。
今年、生誕70年と没後10年を記念するプロジェクト「森田芳光70祭」が始まり、活況を呈している。担当記者が言う。
「11月5日には東京国際映画祭で、代表作として知られる『家族ゲーム』のデジタルリマスター版が上映される予定です。12月には『森田芳光 全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOX』(日活/ハピネット)の発売も控えています。1986年の『そろばんずく』(東宝)や初期の8ミリ作品など、僅かな作品が未収録とはいえ、全集と言っても差し支えない26作品がブルーレイ化されます。森田作品の全貌が分かると話題になっており、予約も好調のようです」
他にも全国の劇場で作品の上映が行われているほか、海外の映画祭でも回顧展が開かれる予定だという。
これだけ「70祭」が盛り上がっている理由の1つに、ヒップホップグループ「RHYMESTER」のMCでラッパーの宇多丸さん(52)の“尽力”があるという。
「宇多丸さんは筋金入りの映画ファンで、ラジオ番組などで作品を熱く語って話題を集めてきました。森田監督のファンとしても知られ、2018年には東京・池袋の映画館・新文芸座で森田監督の全作品を連続上映した際、全27回のトークショーを行って好評を博しました」(同・記者)
大著も刊行
トークショーでは宇多丸さんと森田作品の制作を手がけた三沢和子プロデューサーの対談が行われ、時には撮影スタッフや出演者など関係者が参加することもあった。ちなみに三沢プロデューサーは森田監督の妻でもある。
映画専門誌「キネマ旬報」(キネマ旬報社)は2019年から「2018年の森田芳光」の連載をスタート。誌面でトークショーを再現すると人気を博し、第93回のキネマ旬報ベスト・テンで読者賞を受賞するなど高く評価された。
今年9月には単行本『森田芳光全映画』(宇多丸・三沢和子:編著、リトルモア)としてまとめられた。連載を収録しただけでなく、新たに50人を超える関係者にも寄稿や取材を依頼。500ページを超える大著として刊行された。
なぜ今でも森田監督の作品がこれほどの人気を誇るのか、宇多丸さんにインタビューを依頼した。まずは森田作品との出会いから振り返ってもらった。
「『の・ようなもの』(日本ヘラルド映画)をたまたま名画座で見てファンになってから、『家族ゲーム』以降はほぼ全作品を、劇場公開時に映画館で見ました。他に類を見ないユニークな映画監督として、亡くなるまでずっと追いかけていたんです」
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