不正経理のリーク元と疑われ、論文不正の嫌疑もかけられた元教授が明かす「京大霊長類研究所」騒動のてん末(前編)

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センセーショナルな事件

 京都大は去る10月26日、京都大学は所属の霊長類研究所(愛知・犬山市)を今年度末をもって解体することを公式に発表した。2020年(令和2年)11月には松沢哲郎高等教育院特別教授と他3名を不正経理をおこなったとのことで処分しており、それを受けての学内組織再編とのことであった。同研究所の元教授で『マスクをするサル』(新潮新書)などの著者でもある正高信男氏は、不正経理問題をリークした張本人ではないかと大学幹部に疑われ、論文不正の疑いもかけられたという。その本人が研究所について綴るレクイエムの前編。

 この問題について、京都大の湊長博総長は厳しい箝口令をしいたものの情報は、11日前にはマスコミの知ることとなった。ただし当初、担当記者が原稿を書いても、多くのデスクはこれが事実であることを容易には、受け入れなかったという。サル学とよばれる研究からの知見に慣れ親しんだ人々にとっては、このニュースはそれほどセンセーショナルなものだった。

「サル学の栄光と没落」について

 私はというと、一連の事案がマスコミの知ることとなるのは私からなのではないかという、あらぬ嫌疑を研究所上層部にかけられ、研究に不正があったとの口実を設けて、解体が報ぜられた翌日に不正認定の記者会見というはこびとなった次第。

 個人的には不正調査というもののヒアリングによばれたこともなく、いいがかりもはなはだしいが何を言っても研究所が旧に復することはない。サル山のサルのような喧嘩をこの年になってする気は、さらさらない。

 ただ世界的にもまれな存在であるこの研究所が、サルの研究をめざす者にとって梁山泊のような存在であったこと。だからこそユニークな研究が輩出したこと。そこでの生活は一般社会のそれと、往々にしてかけ離れていたものの「学問の自由」という名の下に許容されていたことを、もはやそういうものが許されなくなった今日、哀惜の念とともに、破天荒ぶりの一端の紹介をかねて、「サル学の栄光と没落」を振り返りたいと思う次第である。

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