現役大学生の松本清張賞作家「波木銅」が語る翻訳者への感謝 「翻訳作品がなければ小説は書けなかった」

エンタメ

  • ブックマーク

翻訳に思いを寄せるようになったきっかけ

 ところで、このように翻訳へ強い思いを寄せるようになったのはつい最近のことだ。きっかけはアメリカの玩具メーカー、ハズブロ制作の「マイリトルポニー」というアニメシリーズに出会ったこと。カラフルでかわいいユニコーンやペガサスが出てくるアニメだ。

 私は今それに感性を打ち抜かれてどハマりしているのだが、公式に日本語訳が存在するのは2021年現在では全エピソードのうちの半分ほどにとどまっている。ローカライズが待てないので原語版のDVDを買った。ネットや翻訳アプリを頼りながら、英語を勉強しつつ、未訳のエピソードをどうにか見ようと試みている。

 そもそも子ども向けアニメなので語学力がおぼつかなくてもそこそこ内容理解が可能なのも相まって、今が生涯でもっとも英語を学ぶモチベーションが高い状態にある。自分のなかの語彙が増えると純粋に嬉しいし、付け焼き刃ながらも実際に外国語と向き合うことで、翻訳者という職業へのリスペクトや羨望もまた、奥深いものとなった。

 もっとも、この世にはまだまだ私が知る由もない、未訳の傑作が星の数ほどあるはずなのだ。いずれはそれらをこの手で見つけ出せたらいいな。

波木銅(なみき・どう)
1999年、茨城県生まれ。21歳の若さで『万事快調』で第28回松本清張賞を受賞しデビュー。

デイリー新潮編集部

2021年10月29日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。