中国に懸念される「ピークに達した大国の罠」(2021年9・10月ー3) API国際政治論壇レビュー(13)
4.米軍撤退のその後
■アメリカの「深刻な能力低下」を強調するロシアと中国
8月15日のカブール陥落、そしてそれに続く米軍の撤退をめぐり、国際論壇では引き続き多くの議論が展開した。アメリカ国内では、バイデン政権の政策への賛否が論じられ、それ以外の諸国でも地域情勢や、さらには世界情勢に及ぼすであろう影響に検討が加えられている。
トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた、元陸軍中将のハーバート・マクマスターは、アフガニスタン駐留軍司令官を務めた経験からも、バイデン政権のカブールからの拙速な米軍撤退の方針を批判している[H.R. McMaster and Bradley Bowman, “In Afghanistan, the Tragic Toll of Washington Delusion(アメリカの思い違いがアフガニスタンにもたらした悲劇的損失)”, The Wall Street Journal, August 15, 2021]。このことによって、アフガニスタンで今後テロリストが育成される危険があり、またジハーディストが将来、アフガニスタン国外でテロリズムを実行する危険が高まるであろう。
ウォルター・ラッセル・ミードは、今回のアメリカの挫折は、アメリカの軍事的な信頼性は損なわないかもしれないが、「アメリカは実効的な政策を策定し、それを維持する能力が欠落している」という認識が広がっていることを懸念している[Walter Russell Mead, “The Deeper Crisis Behind the Afghan Rout(アフガンでの大敗の裏にあるより深遠な危機)”, The Wall Street Journal, August 23, 2021]。そのような認識が広がること自体が、将来のアメリカの行動の制約要因となるであろう。さらにミードは、アメリカ国内でこの問題をめぐり共和党と民主党が責任をなすりつけ合って、党派対立とイデオロギー的分裂が深まっていくことを懸念する。ミードが述べるように、党派的対立を超えて、アメリカが抱える困難な課題に適切に対処していかなければならない。やはり、このカブール陥落がアメリカの対外政策にこれから及ぼすであろう負の要因が強調される傾向が見られる。
他方で、ロシアや中国の論壇では、アメリカの失敗に執拗に光を当てて、現在のアメリカの対外政策の問題点を抽出して厳しく批判する傾向が見られる。ロシアでは、ウラジーミル・プーチン大統領の外交アドバイザーのヒョードル・ルキアノフが、20年におよぶアフガニスタン戦争を「壊滅的な失態」と表現する[Fyodor Lukyanov, “об Афганистане: Америка не возвращается - бежит (アフガニスタンについて 「アメリカは戻った」のではなく、「自国中心主義的」となっている)”, Российская газета (Rossiyskaya Gazeta), August 16, 2021]。そしてこの「失態」は「歴史に残るだろう」と述べている。アメリカは、このアフガニスタンでの戦争によって財政的に疲弊するばかりか、同盟国からの信頼や威信も大きく損なった。さらにはアメリカのインテリジェンス能力やその巨大な軍事組織の指揮系統にも懸念が示されるようになっている。ルキアノフは、「アメリカは戻ってきた(America is back)」というバイデン大統領のスローガンが、実は、「アメリカは自国に撤退した(America is home)」を意味していると揶揄している。民主主義を広げるという夢が破れた結果、アメリカは利己主義に回帰して、その外交は自国第一主義に後退しつつあるというのだ。
中国の『環球時報』では、中国国際問題研究所欧州研究センター長の崔洪建が、米軍のアフガニスタンからの撤退により欧州諸国の間で疑念と不信が広がっていることに注目する[崔洪建(Cui Hongjian)「阿富汗“大溃败”重创欧美关系(アフガニスタンでの大敗は米欧関係に重大な損害を与えた)」『环球网』、2021年8月25日]。そしてそれが米欧関係における「付随的損害」となっていると論じる。さらには、より深刻な問題として、今回の米軍の撤退はアメリカの介入主義的な政策の挫折を意味するだけではなく、アメリカの外交機関と軍事機関の判断の誤りや、情報分析能力の低下などが背後にあるとする。これまでアメリカとの対立を続けてきたロシアや中国は、アメリカの挫折を強調することにより、自らの主張の正当性を証明しようとしているような印象を受ける。
アメリカの軍事的関与の後退に伴う国際社会の動揺は、とりわけ中国からの軍事的圧力が強まっている台湾において深刻である。台湾の国民党系の新聞、『中国時報』では、「アフガニスタンの悲惨な結末が、台湾に衝撃を与える」と題する社説のなかで、今回の米軍の撤退が台湾海峡を含めてアメリカの軍事的関与についての深刻な疑念を生じさせているとの見方を示した[「阿富汗悲慘結局 台灣的震撼彈(アフガニスタンの悲惨な結末が台湾に衝撃に与える)」『中国時報』、2021年8月14日]。「今日のアフガニスタンが、明日の台湾」とならないためにも、台湾は過度なアメリカへの依存から自立する必要があるという。そして、米軍撤退による「力の空白」の誕生が、中国やロシアの影響力拡大に繋がると論じている。
対照的に、民進党系の新聞である『自由時報』の社説では、これまで40年間の年月をかけて防衛能力を向上させてきた台湾は、タリバン勢力に敗走して崩壊したアフガニスタンの場合との大きな違いがあると論じる[「從台灣經驗看阿富汗(台湾の経験からアフガニスタンを見る)」『自由時報』、2021年8月25日]。それゆえ、「今日のアフガニスタンは、明日の台湾」とはならないと、そのような言説を強く否定する。いまや台湾は、民主主義勢力のインド太平洋における最前線に位置しており、コロナ禍の対応や半導体供給のサプライチェーンにおいてその重要性は高まっている。
このように台湾では、アフガニスタンからの米軍の撤退をめぐって国民党と民進党とで対照的な教訓を導き出している。
とはいえ、米海軍予備役将校のブレイク・ヘルツィンガーが『フォーリン・ポリシー』誌に寄せた論考の中で論じているように、アフガニスタンと台湾はアメリカとの歴史的な紐帯も、アメリカにとっての安全保障上の重要性も、全く異なっている[Blake Herzinger, “Taiwan Isn’t Afghanistan, Whatever Beijing Says(北京がなんと言おうとも、台湾はアフガニスタンではない)”, Foreign Policy, August 23, 2021]。同列に論じることは乱暴であろう。アフガン撤退でアメリカの「信頼性」が低下したと繰り返し語られる中で、その内容があまりにも雑に論じられていることを批判して、アメリカが今問われているのはむしろ政策遂行能力であると強調する。必ずしもアメリカの信頼性が低下したわけでもなければ、アメリカの影響力が後退したわけでもない。しかしながら、バイデン政権が適切に政策を遂行できなかったことについては、厳しく批判を加えている。
■『ルモンド』が注目した「今後のアフガニスタン難民危機」
はたして米軍撤退後のアフガニスタンでは、タリバンの統治の下で再びテロリズムが勢いづくのであろうか。イスラム過激主義の専門家であるジョージタウン大学教授のダニエル・バイマンは、それとは異なる見解を示している。バイマンは、『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄せた論考のなかで、タリバンもパキスタンも国際テロリズムを支援することはないだろうと論じ、タリバンの勝利が必ずしもアル・カーイダの勝利になるわけではないと論じている[Daniel Byman, “Will Afghanistan Become a Terrorist Safe Haven Again? Just Because the Taliban Won Doesn’t Mean Jihadis Will(アフガニスタンは再びテロリストの巣窟となるのか? タリバンが勝ったからといって、イスラム過激派が勝つとは限らない)”, Foreign Affairs, August 18, 2021]。タリバン政権下のアフガニスタンで、むしろタリバンを攻撃するアル・カーイダのテロが続くことに示されるように、バイマンの主張がより現実に即したものといえるのではないか。
『ワシントン・ポスト』のコラムニストのデイヴィッド・イグナシアスもまた、これからのアメリカのアフガニスタン関与は、アメリカ政府がタリバンとどのような協力関係を構築するかによって大きく左右されると論じる[David Ignatius, “Can the U.S. work with the Taliban in Afghanistan? That’s the central question(アメリカはタリバンと協力することができるのか? それが核心的な課題である。)”, The Washington Post, August 24, 2021]。実際に、アフガニスタンを統治するのがタリバン政権であり、一定数のアメリカ政府関係者がまだアフガニスタンに残留していることを考慮すれば、そのような主張は適切なものというべきであろう。
他方で、それとは異なる主張もみられる。最近の国際情勢の変動にも積極的な発信をする国際政治学者のスティーブン・ウォルトは、米軍のアフガニスタンからの撤退が、アメリカの信頼性の低下には繋がらないし、それほど不安に考えるべきものでもないと論じる[Stephen M. Walt, “Afghanistan Hasn’t Damaged U.S. Credibility(アフガニスタンは米国の信頼性にダメージを与えることはない)”, Foreign Policy, August 21, 2021]。アメリカは、これ以上、対外軍事介入による資源の浪費もなくなるであろうし、より優先すべきことに時間や資源を集中して用いることが可能となる。
ウォルトは以前から国際政治学者として、オフショア・バランシング戦略の意義を提唱しており、アメリカの過剰な対外軍事介入を批判してきた。イラク戦争の際にも、ネオリアリストの国際政治学者として、封じ込め戦略を用いてサダム・フセインに対処可能だと説き、アメリカのイラクへの軍事介入には反対の論陣を張った。ただし、そのような見解は必ずしもワシントンDCの対外政策の専門家の間では多数派とはなっていない。
アメリカでの議論が、バイデン政権の政策への賛否を問う性質のものが多い中で、フランスの『ルモンド』紙の社説はそれとは異なる論点に注目する。すなわち、今回のカブール陥落は、今後深刻なアフガニスタン難民危機をもたらすことになるであろうから、そのような難民を国際社会が保護することが重要となる[Éditorial, “L’asile pour les Afghans persécutés, un droit et un devoir (迫害されたアフガン人の保護は、権利であり義務である)”, Le Monde, August 19, 2021]。この記事は、そのような保護は人道上の義務であると論じて大きな反響を呼んだ。というのも、2015年のシリア難民危機の結果、多くの難民が欧州諸国に流入したことが、その後の欧州諸国での移民排斥を訴える右派ポピュリズムの興隆に繋がっていたからだ。難民保護の人道上の要請と、難民流入に対する国民の強い抵抗と、この二つの現実をどのように調整し、均衡させるかが、各国政府にとっても難しい課題となるであろう。
5.中国の台頭の終焉?
■「ツキジデスの罠」ではなく「ピークに達した大国の罠」
アフガニスタンからの米軍の撤退は、中国にとっては好機と危機の双方をもたらしている。昨年まで人民解放軍上級大佐を務めていた周波は、「一帯一路」の拡充や鉱物資源へのアクセスの強化という経済的機会と、アフガニスタンにおける中国の影響力拡大という政治的機会と、そのいずれも中国が得ることができると論じている[Zhou Bo, “In Afghanistan, China Is Ready to Step into the Void(アフガニスタンで、中国は空白に踏み込む準備ができている)”, The New York Times, August 20, 2021]。いわば、アレクサンダー大王、イギリス帝国、ソヴィエト連邦、そして今回のアメリカ帝国と、長らく征服者にとっての「墓場」となってきたアフガニスタンに対して、中国は「爆撃」によってではなく、明確な協力の「青写真」を携えて進出していく。それによってこれまでの「呪い」が破られることを証明できるだろうと、楽観的な見通しを示している。
だが、そのような楽観論は中国でも少数派と言える。むしろ中国自らも、イスラム過激派のテロリズムが中国国内に逆流することに、かなりの警戒感を示しているようだ。イギリスやアメリカとは異なり、陸続きでアフガニスタンに接する中国は、長い歴史の中でこの地域の複雑さや、関与の難しさを十分に理解しているようである。そのような観点から、『環球時報』紙の9月8日付の社説では、中国はアメリカとは異なって、アフガニスタンで地政学的な野心や、介入主義的な意図をもっていないために、アメリカが陥ったような「罠」にはまることはないだろうと予見する[「社评:发展中阿关系,中国不会掉入“陷阱”(社説:中国アフガニスタン関係が発展しても、中国は「罠」に陥ることはない)」『环球网』、2021年9月8日]。中国はあくまでも相互尊重と互恵的協力を基礎として関与を行うため、アメリカが期待するようにアフガニスタンが「中国の墓場」となることはない。欧米のエリートと異なる東洋の大国の知恵と、穏健で謙虚な姿勢でこれから関与していくため、建設的な協力が可能となるというのだ。
アフガニスタン情勢に詳しいアメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)セス・ジョーンズ副所長は、中国専門家のジュード・ブランシェットとの共著論文の中で、アメリカ撤退後のアフガニスタンで中国はさまざまな困難に直面するであろうことを予期する[Seth G. Jones and Jude Blanchette, “China’s Afghanistan Dilemma: What’s Bad for Washington Isn’t Necessarily Good for Beijing(中国のアフガニスタン・ジレンマ:米国にとってあるいことは必ずしも中国にとって好都合というわけではない)”, Foreign Affairs, September 13, 2021]。とりわけ新疆でウイグル人国家建設を望むいわゆる「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)の存在が、中国にとっての懸念となっているという。何よりも大きなジレンマは、アフガニスタンが安定化しなければ中国は大規模投資を行うことができないが、投資を増やさなければアフガニスタンは安定化しない。必ずしも米中両国は、アフガニスタン問題をめぐってゼロサムの関係にあるわけではない。とはいえ、中国が今後、アフガニスタン情勢に最も影響を受けることになるであろうから、中国の指導者にとってはまたもう一つ、困難な問題が増えたことを意味するのだろう。
中国の台湾に対する軍事攻撃の可能性が、通常想定されているよりも大きいと『フォーリン・アフェアーズ』誌上で論じたことで注目されたアメリカの中国専門家、オリアナ・スカイラー・マストロは、米軍のアフガニスタンからの撤退が必ずしも中国を利するわけでも、中国による台湾侵攻の可能性を増大させるわけでもないと論じる[Oriana Skylar Mastro, “What the U.S. Withdrawal From Afghanistan Means for Taiwan(米国のアフガン撤退が台湾に意味するものとは)”, The New York Times, September 13, 2021]。むしろアメリカはこれから、資源を対中政策へとよりいっそう多く向けることができるだろうから、中国は簡単にそれを喜ぶことはできないだろう。これまで中国は、アメリカが20年間のアフガニスタンの戦争で国力を疲弊させている合間に、東アジアでの自らの影響力を拡大してきた。もはや中国は、アフガニスタン安定化をめぐってアメリカの軍事的関与にただ乗りすることができなくなった。
このようにして、アフガニスタンと中国との関係は決して一筋縄には行かない。そのなかでもとりわけ重要となるのが、中国とパキスタンの関係である。米スティムソン・センターのシニア・フェローで、南アジアの専門家であるエリザベス・スレルケルドは、タリバン政権がアフガニスタンで成立したことは、これまでのパキスタンと中国との協力関係の深化を妨げることになると予想する[Mercy A. Kuo, “Pakistan-China Relations and the Fall of Afghanistan: Insights from Elizabeth Threlkeld(パキスタン・中国関係とアフガニスタン陥落:エリザベス・スレルケルドの見解)”, The Diplomat, August 31, 2021]。中国は現在のところアフガニスタンへの投資をほとんど拡大しておらず、鉱物資源へのアクセス強化のため「一帯一路」構想を活用するという見解については、スレルケルドは懐疑的である。むしろ、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の下での中国のパキスタン投資が、これからアル・カーイダのようなテロリストの攻撃にさらされることで地域情勢が不安定化し、後退していくかもしれない。
あまりにも多くの不安要素を抱える中国について、ハル・ブランズとマイケル・ベックリーが「中国の台頭の終焉」を論じているのは注目に値する。現在ジョンズ・ホプキンズ大学教授のブランズは、アメリカのグランド・ストラテジーについて優れた著作を多く刊行する、最も影響力の大きな中堅の国際政治学者の一人であり、同じく中堅の国際政治学者のベックリー・タフツ大学准教授との共著論文のなかで、中国がこれから急速に衰退していくことによってアメリカとの戦争の可能性が高まることを懸念する。いわば、急速に台頭する大国がもたらす「ツキジデスの罠」ではなく、「ピークに達した大国の罠」に留意しなければならない。二人は第一次世界大戦前のドイツ帝国や、第二次世界大戦前の日本をその例として示す。経済成長の鈍化と急速な人口減少、そして習近平の強権的な政策とを同時に経験する中国は、国力が本格的に後退する前に台湾に侵攻する可能性すらあるという。[Hal Brands and Michael Beckley, “China Is a Declining Power—and That’s the Problem: The United States needs to prepare for a major war, not because its rival is rising but because of the opposite(中国は衰退国であり、それが問題なのだ ―ライバルが台頭しているのではなく衰退しているからこそ、アメリカは戦争に備えるべきだ)”, Foreign Policy, September 24, 2021/Michael Beckley and Hal Brands, “The End of China’s Rise: Beijing Is Running Out of Time to Remake the World( 中国の台頭の終焉 ―北京による世界変革は時間切れ間近)”, Foreign Affairs, October 1, 2021]
■社会の不満を吸収する「李光満文書」
他方で、それとは論調が異なりながらも、中国国内でも興味深い論考が注目された。「李光満文書」としてネットでも話題となっているものであり、著名な極左の保守派ブロガー、李光満がWeChatで主張した内容が、次々と『人民日報』や、CCTV(中国国営中央テレビ)、『解放軍報』などで転載され紹介されている[李光满(Li Guangman)「每个人都能感受到,一场深刻的变革正在进行!(誰もが感じ取れる、重大な変革は今進行している最中だ!)」『人民网』、2021年8月29 日]。今や習近平政権の下で中国は、富裕なハイテク企業や、著名な芸能人への締め付けが強まっている。「文革再燃」が喧伝されるなかで、李光満は社会全体が「資本中心から人民中心へ変化」すると主張して、本来の共産主義社会へと回帰していると評価する。社会の不満を吸収するかたちで、この李光満文書が幅広く読まれ、中国の論壇の注目の的となっている。
台湾の民進党系の『自由時報』の社説では、このような中国国内での傾向を懸念して、習近平が「第二の毛沢東」のイメージで商業や娯楽業界への急進的な締め付けを行うことは、中国の孤立化と貧困化を招くことになるだけだと警鐘を鳴らす[「習近平走上毛澤東的老路(習近平は毛沢東と同じ道を辿っている)」『自由時報』、2021年9月6日]。この社説では、北京大学経済学教授の張維迎の警告を参照して、そのような政府の干渉や締め付けの強化は、「共同富裕」ではなく「共同貧困」に陥ることになるかもしれないと指摘している。いずれにせよ、これらの中国国内での動きが、中国経済の将来に暗い影を投げかけていることは確かであろう。
これ以外にも、ドイツの総選挙と、日本における岸田文雄政権の成立というように、日独両国で新しい政治的な動きが見られた。ドイツの場合は連立交渉、そして日本の場合は衆議院選挙が控えており、それらの結果により、これからの自由民主主義勢力の方向性は左右されるかも知れない。ただし、おそらくいずれの場合も、従来の外交路線からの根本的な転換が起こる可能性はあまり高くないのではないか。 (9・10月、了)