日本政府は海外居住者に冷た過ぎる…コロナ禍で浮き彫り「在外投票」のあまりに多い問題点

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 投開票が31日に迫った衆院選。全国各地で激しい選挙戦が繰り広げられている中、日本国外で暮らす有権者の「在外投票」は、いち早く投票が締め切られた。投票所の設置を見送った大使館が続出したほか、投票できる日数が大幅に短縮されるなど、新型コロナウイルス禍で初めての大型国政選挙は、世界各地で混乱を引き起こしている。投票する機会を奪われた在外邦人からは、悲鳴や怒りの声が上がり、海外だけでもインターネット投票を速やかに導入するよう求める意見が強まっている。

「日本の選管から(投票用紙が)届いたが、31日までには絶対、日本に届かない」

「一方的に投票する権利が奪われている」

「日本政府は、海外居住者にとにかく冷たい」

 海外に住む日本人からツイッターなどのSNSで選挙絡みの書き込みが目立ち始めたのは今月中旬ごろ。岸田文雄首相が14日に衆院を解散し、19日に公示、解散から月末の投開票日まで17日間しかなく、今回は「戦後最短」のスケジュールとなった。この余波を受け、とりわけ日本との間で1往復半のやり取りが必要な「郵便投票」を選んだ有権者にとって、極めてタイトな日程となっている。

領事館は郵便投票を呼び掛け

 在外投票の実現を目指し、1993年から活動を続けている「海外有権者ネットワークNY」の竹永浩之共同代表(米ニュージャージー州在住)は「今回は、これまでの国政選挙と比べても、投票関係のツイッター投稿数が明らかに多い」と指摘。背景に、政府がコロナ対策として、各地の大使館や領事館で直接票を投じる「在外公館投票」よりも、郵便投票を推奨したにもかかわらず、現地の郵便事情や選管の対応遅れなどで投票できなくなった人たちの怒りが込められているという。

 在ニューヨーク総領事館は9月初旬、現地邦人に対し「在外選挙(郵便等投票の活用について)」とのタイトルで、郵便投票を呼び掛けるメールを送信した。本文で「『郵便等投票』は、新型コロナウイルス感染防止の一助にもなりますので、ご活用ください」と強調。同時に、投票用紙の請求や交付など日本国内の各選管とのやり取りには、一定の時間がかかるとして、早めの請求も呼び掛けた。関係者によれば、同様のメールは世界各地の在外公館から発信されたという。

 移動などによる感染リスクを避けるため、在外公館での投票を避けようとした人や、在外公館から遠く離れた地に住んでいる人を中心に郵便投票を選んだ有権者は、国内最終居住地の選管に投票用紙を請求。ただ、郵便・宅配事情は先進国、途上国によって状況が大きく異なる上、コロナ禍では先進国でも遅れるケースが目立っている。加えて、首相が下した戦後最短の衆院選スケジュールは選管に混乱をもたらし、海外有権者からは「まだ投票用紙が届いていない」との声がSNSで相次ぐ。

 投票用紙が届かないため、急きょ在外公館投票に変更しようと思っても、投票できない問題が生じている。大使館などでの投票時に必要な「在外選挙人証」も、投票用紙請求時に一緒に日本に送っているため、選管から投票用紙と合わせて返送されない限り、在外公館投票も不可能となるためだ。

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