バラマキ合戦の総選挙で議論されない「分配」の原資 野党の「金持ちから取ればいい」は無理筋

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はっきり増税に触れている共産党

 総選挙の投票が目前に迫っている中、各党の選挙活動が熱を帯びている。そんな折、政策の焦点になっているのが、「分配」か「成長」か、だ。岸田文雄首相は総裁選の最中、「新自由主義的政策は見直す」「アベノミクスで成長したが分配が不十分だった」と、分配優先の政策を打ち出した。「まずは分配」というのが左派野党の専売特許だったが、自民党が分配重視に傾いたことで、選挙は、分配合戦、バラマキ合戦の色彩が強まっている。だが問題は、分配の原資はどこから捻出するのか、ということである。

 大手新聞の政治部デスクが解説する。

「選挙戦で、はっきり増税に触れているのは共産党。法人税率の引き上げや富裕層への増税を明言しています。立憲民主党も政策集の中では、所得税の最高税率の引き上げや法人税への超過累進税率の導入などを書いていますが、選挙戦ではもっぱら消費税率の時限的引き下げのみを強調しています。ただ、岸田首相が『当面は考えていない』と述べた株の売買・配当利益に対する金融所得課税も強化する方向です」

法人税引き上げを明言できない自民党

 岸田首相は総裁選の際、金融所得課税を強化すると明言していた。それが首相に就任するや早々に旗を降ろし、先送りをしている。財務省担当記者が言う。

「高額所得者は配当収入が多いので、1億円を超えるぐらいから実際の負担税率は下がってくる。そのことを示す資料は財務省が作ったもので、岸田さんの裏には、金融課税を強化したい財務省がいると見られていました。何しろ岸田さんは財務省の影響力が強いとされてきた宏池会の会長ですからね。ところが、商店経営者や、現役を引退している高齢者など自民党の支持層の多くは配当収入のある人たちです。一斉に反発の声が議員を通じて自民党に集まってきた。これでは選挙を戦えないと危機感を持った商工族の甘利(明)さんが幹事長に就任し、実権を握ったことで、財務省の目論見は潰されました」

 では、自民党はどうやって「分配」するための財源をひねり出そうと言うのか。前出のデスクが言う。

「自民党は、法人税率を引き上げるとは口が裂けても言えないので、結局、『成長』と言い出しました。まずは成長してパイを増やすことが重要だ、と。これではアベノミクスと変わりません。安倍元首相は『経済好循環』と言い続け、財界トップを呼んでベースアップを求めて実現させたり、最低賃金を引き上げるなど、『官製春闘』と揶揄されながらも、政府としてギリギリのことをやっていた。岸田さんはそれが不十分だと言うものの、どうやって給与を上げていくのか示すこともせず、いつの間にか、総裁選で口にしていた『所得倍増』も言わなくなりました」

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