首都直下型地震で警戒すべき「埋没谷」とは 注意すべき3エリアは?

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震度5強を観測した足立区も「埋没谷」

 実は、本誌は備え方のヒントを、今年8月に誌面で紹介していた。国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(産総研)がウェブサイトで公開している「都市域の地質地盤図」がそれである。これは、立体画像を表示するソフトをインストールすれば、だれでも東京都区部の地下の3次元マップを見られる、というもの。当該箇所の地質状況を知るために、断面図を描画することもできるのだ。

 その際、キーワードになったのが「埋没谷」だ。産総研の情報地質研究グループ長、中澤努氏は、本誌が前回取材した際、「今回分かったのは、東京低地の地下に『埋没谷』が存在することです。ここに昔できた谷があることは知られていましたが、今回、その形状をこれまでに例がないほど詳細に描き出すことができたのです」と答えていた。

 そして、このたび震度5強を観測した足立区は、まさに「埋没谷」の上に位置している。8月の記事でもそのことに警鐘を鳴らしていたのである。

 地下の地形や地質状況と地震の揺れの関係については、追って詳述する。まずは、先日の地震の原因等を押さえておきたい。

埋没谷は揺れやすかった

 京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏(地球科学)が説明する。

「東京の地下には、陸のプレートである北米プレートと、海のプレートであるフィリピン海プレートと太平洋プレートという、三つのプレートが沈み込んでいて、先日の地震は、フィリピン海プレートと太平洋プレートの境界付近で起きています。マグニチュード(以下M)は5・9とやや大きかったのですが、地表から75キロという、かなり深い地点で起きたために、それほど大きな揺れにはなりませんでした」

 その揺れの特徴だが、

「地震には短周期地震動と、長周期地震動があり、ガタガタと揺れるのは前者、ゆらゆら揺れるのは後者という違いがあります。地震が起きると、地下深くではどちらの周期も発生するのですが、地面に到達するまでの間にどちらかが減衰して、残ったほうが悪さをします。先日の地震では、長周期のほうが建物に影響を与えました。長周期地震動のゆらゆらとした揺れは、ゆっくりと揺れる高いビルと共振しやすいため、今回も高層ビルの最上層などで、食器棚の食器が落ちたり、モノにつかまらないと歩けなかったりしたのです」

 だが、その揺れも、震源からの距離の遠近とはまた別に、地区によって異なるが、それはなぜか。

「地震は地盤の強度や、表層地盤のやわらかさ次第で、揺れが強くなったり弱くなったりします。たとえば、強い揺れを観測した埼玉県川口市は、荒川や利根川が近くにあり、粘土や土砂が地下に溜まっています。それが地震の揺れを増幅するやわらかい地盤で、地震本来の揺れが地盤のために増幅され、より強く揺れてしまうのです」

 そうして話は「埋没谷」に及んでいく。

「産総研が出した3次元マップは、簡単に言うと、地盤の違いによる揺れやすさを示したもの。今回、川口市と同様に揺れが強かった足立区は、埋没谷が埋まっている地域でした。そういう場所はやはり揺れやすいということが、先日の地震で実証されてしまったことになります」

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