東大大学院教授がデジタル教科書に警鐘 「覚えやすいのはスマホより紙」
デジタル機器の欠点
さらに記憶を想起中の脳活動をMRI装置で測定したところ、興味深い結果が得られた。
「言語処理に関連した運動前野外側部と下前頭回や、記憶処理に関係する海馬、視覚を司る領域で、手帳群が他の群と比べて脳活動が高くなりました。これまでスマホやタブレットなどの電子機器が日々の学習に及ぼす影響については十分な検証がなされてきませんでしたが、この実験によって、覚える時に紙の手帳を使用した方が、一層豊富で深い記憶情報を取り出せることが明らかとなりました」
デジタルよりもアナログの方が脳は活発になるという驚くべき結果。なぜ、紙の手帳の方が記憶しやすくなるのだろうか。
「紙は覚えたことを思い出すための手がかりが豊富であることが原因でしょう。手帳にメモする場合、その手帳の何ページあたりで、見開きのどの位置に書いたか、といった『空間的な情報』と関連づけて、書き留めた内容を記憶できます。また、自分で書き留めたという『体験の情報』と相まって、書いた内容が頭に浮かんできます。筆の運びや筆圧が記録されることも、想起する時の手がかりとなる。ボールペンよりも万年筆や毛筆のように、太さや速さの変化が痕跡として残る筆記具の方が、文字の視認性に優れています。さらに下線を引いたり付箋を貼ったりすれば、一層忘れにくくなります」
一方でデジタル機器によるメモについては、次のような「欠点」を挙げる。
「デジタル機器では文字が書きにくい。ペンが滑って筆圧がコントロールしにくいですし、後で自分の字が読めないこともあります。また、画面のスクロールなどのために位置と結びつかないので、記憶がしにくいのです。デジタル機器のメモ機能は、メモ帳と比べて改善の余地が大きいと感じます」
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