東大大学院教授がデジタル教科書に警鐘 「覚えやすいのはスマホより紙」

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 スマホやタブレットはいまやビジネスシーンで不可欠となり、学校ではデジタル教科書の導入も着々と進んでいる。しかし、そこへ一石を投じたのは東大大学院教授による実験結果。なんとデジタルより手書きの方が覚えやすく、脳活動も活発になるというのだ。

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「教育やビジネスの現場において、スマホやタブレットではなく、あえて紙のノートやメモ帳を使うことで記憶が定着しやすくなる。そのことが、この実験によって示されたと思います」

 そう語るのは言語脳科学者で『チョムスキーと言語脳科学』(集英社インターナショナル)などの著書がある東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉(くによし)教授(57)だ。

 スマホやタブレットはいまやビジネスパーソンにとって必須のツールである。手書きの手帳やメモ帳を使っていた人も、スケジュールはスマホのアプリで管理、打ち合わせにはタブレット持参、コロナ禍で増えたオンライン会議では資料の画面共有だけで済ませる、といったケースも多いだろう。

 学校などの教育現場でも、紙の教科書に代わるタブレットなどのデジタル教科書が使われはじめ、2024年度から全国の国公私立すべての小中学校で本格的に導入される予定だ。そうした中で今年の3月、酒井教授らはNTTデータ経営研究所との共同研究を通して、変わりゆく我々の生活に対し一石を投じる研究結果を公表した。そこで行われた実験とは大要以下のようなものであった。

 18歳から29歳の東大の学生と一般公募者の計48人を16人ずつの三つのグループに分け、それぞれ、手帳、タブレット、スマホという別々のメディアを使って、ある課題に取り組んでもらうというものだ。

 課題では、ある大学生の日常生活に関する会話文を読み、「2月13日10時半、ドイツ語授業」「2月23日、統計学レポート17時〆」などのスケジュール情報を書き留める。手帳グループは4色ボールペンで手帳に、タブレットグループは電子ペンでタブレットに、スマホはフリック入力等でスマホに入力した。それから1時間後にその書き留めたメモを見ない状態で「レポートの早い方の締め切りはいつか?」などの質問に回答していくのだ。どのデバイスを使ったかにより、記憶力に差が生まれるのかを実証しようという試みである。

 さて、その結果は――。

「全体的な正答率については3群で差が見られませんでした。ところが、『図書館に参考文献を取りに行くのは何時?』といった予定を直接尋ねるような簡単な問の正答率では、手帳群の方がタブレット群よりも高くなりました。また、スケジュールを書き留める速さでは、手帳群がタブレット群やスマホ群と比べて速かったのです。手帳群は最も短時間で正確に記憶できたということになります」(酒井教授。以下同)

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