岸田首相の実行力は未知数 枝野代表の本気度に疑問符 見極めるべき公約の実行力とは?

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「核なき世界」宣言の軽さ

 そして広島出身の岸田首相が所信表明演説で宣言したのが、「核のない世界」の実現です。

「これまで世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶と言う名の松明を私もこの手にしっかりと引継ぎ、核のない世界に向けて全力を尽くす」

 ところが公約には核廃絶について一言も触れられていません。自民党のある閣僚経験者は「公約はタカ派の高市政調会長の影響力が強くて、とても盛り込む雰囲気じゃなかった」と語ります。でも中国や北朝鮮の脅威にさらされている状況で、アメリカの核の傘の下にいる日本が核廃絶を目指すことが簡単ではないことは分かっていたはず。所信表明で岸田首相は、単なる個人的な希望を述べただけなのでしょうか。

「聞く力」リーダーの実行力は未知数

 首相になってから医療従事者や飲食店経営者らと何度か行っている「車座対話」では、国民の声をしっかり聞こうとする岸田首相の丁寧な姿勢が見てとれます。「聞く力」を自らの長所としている以上、自分の主張への異論や慎重論にも耳を傾けるでしょう。ただそれによって、リーダーである岸田首相の信念や決断力が見えにくくなるばかりか、発言の信ぴょう性にも関わってきます。今後、掲げている政策を遂行するリーダーシップを発揮できるのか、実行力は未知数と言わざるを得ません。

枝野代表の本気度をどう見るか

 一方、立憲民主党の枝野代表。政権交代を目指す野党の立場ですが、公約には自民党より具体的で耳心地の良い政策が並んでいます。実際に政権を取った場合の公約実現への本気度、実行可能性が問われます。

 枝野氏が「初閣議で直ちに決定する事項」として発表した「日本学術会議に任命拒否された6名の任命」や「森友・加計・桜問題真相解明チームの設置」といった7つの項目は、予算の裏付けも必要なく、政権が変わればすぐに実行するでしょう。また「政策の一丁目一番地」と位置付ける、選択的夫婦別姓制度の導入などは早期実現を図ってくる見通しです。立憲民主党の前議員の一人は、「選択的夫婦別姓賛成は違いが分かりやすい。岸田首相が慎重姿勢でありがたい」と語ります。

「大盤振る舞い過ぎる」分配政策

 ただ今回の公約の柱となっている分配の強化策、「消費税率5%」「年収1千万以下の所得税無税」「低所得者に年12万円の現金給付」などは、1年の税収がおよそ60兆円の日本で20兆円近く使う政策です。財源を赤字国債だけに頼って、どの程度の効果と必要性があるのか精査しないと、無責任のそしりは免れません。

 枝野代表は「100年に一度の危機への対応策だ」と必要性を訴えますが、立憲民主党内からも「あまりの大盤振る舞いで、本気で政権を取る気がないと思われている」と苦々しい声も上がっています。税金を下げるのは簡単ですが、戻す際は実質増税になります。その前に新たな自然災害や経済危機などがやってこないとも限らず、戻す契機を失うリスクもあります。

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