「京都・亀岡暴走事故で加害者が出所」に遺族の父親が思うこと

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半年に1度、知らされる加害者の生活

 結局この1年、仮釈放は認められることはなかった。

「私たちの意見は反映されないと言われていたわけですが、ある程度は汲んでくれたのかなと思いました。弁護士も驚いていましたね」

 と振り返る中江さんは、「ただ……」と続ける。

「加害者が刑務所に入ったのが19歳。27歳以上になると大人の刑務所に移送しなければならないという法律の仕組みがあります。そのことを私は裁判中には知らなかった。不定期刑の最高が9年。27歳から逆算した判決なんだなと気づいたら虚しくてやりきれませんでした」

 被害者遺族には半年に1度、刑務所内での加害者の生活状況が知らされることになっている。

「工場の中で真面目にやっていますというような報告で、A4で1ページくらいの分量です。評価の基準は書いていないし、一生懸命がんばっていると記してあっても、押し付けられているようにしか思えない。その姿を見せてもらえるわけではない。私が以前に京都の刑務所で講演した時には、受刑者の作業中の様子を見学させてもらえたのですがね」

 出所直前の今年7月には2度目の意見陳述を行った。

「例えば出所しても保護司のもとで生活しながら、私たちの意見が伝わる体制が取れたりできないかという思いも伝えましたが、それは認められませんでした。結果を裁判で認めたわけじゃない。本人から手紙はなく、親からも特に謝罪はありません」

「被害者も加害者も作ってほしくない」

 中江さんが続ける。

「遺族仲間の中には、加害者が“刑務所を出たら謝罪に行きます”という意思表示があった後、実際にそうしてもらったり、それを続けてもらったりする人はいるし、一方でそれが1度きりだった例もあるそうです。私たちのところには何もないから、たとえ1度でもすごいなと思います」

 代表を務める犯罪更生保護団体「ルミナ」には、覚せい剤取締法違反や傷害など前科を重ねた人たちも参加している。それを主宰したのは、「人は変われる、変わることができる」という考えがあったからなのか?

「もちろんそういう点はありますが、ルミナをやっているのは苦しいからです。事件のことは忘れられないし、被害者も加害者も作ってほしくない。きれいごとかもしれないけど、僕の身近な人であれ誰であれ、そういう境遇になってほしくないんです」

 ルミナの代表として行う講演で刑務所などに出向いたら、こんな風に語りかけるという。

「“刑に服したからといってそれで償いは終わりじゃない。ここを出てきたら大事な人のところへ帰れよ。被害者やその関係者に対して、頭こすりつけて謝罪しに行けよ、そっからが始まりじゃないのか、お前たちの社会復帰は”と言っています。被害者の苦しみを目の当たりにすべきだと思うからです」

 それはそっくりそのまま、出所した加害者に対する中江さんの思いでもあるのだ。

「死んだ娘が加害者を許すことはないだろうし、生命を奪った人間に対して、遺族としては情状酌量の余地はない。ただ、加害者が気持ちを少しでも示してもらえるなら少し心は穏やかになるとは感じていますよ」

デイリー新潮取材班

2021年10月25日掲載

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