がん患者の4分の1の死因「がん悪液質」とは 体重減少で衰弱、期待の治療薬が登場
体重が減少して衰弱、肺炎のリスクも
国際的には、「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少を特徴とする多因子性の症候群」と定義されている。骨格筋とは、骨格に沿った筋肉のことで、立つ、歩く、座るなどの動作に必要な筋肉のことだ。
「がん悪液質は、進行がんの患者さんの約5~8割にみられます。がんの種類によって発症リスクは異なり、すい臓がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、肺がんで起こりやすく、乳がんや前立腺がんでは、病気がかなり進行するまで起こりにくい傾向があります。がん悪液質で問題なのは、体重が減って衰弱すると、積極的な治療が受けられなくなり、肺炎などの合併症を生じやすくなるため、予後が非常に悪くなることです。ある論文では、がん患者の4分の1が、がん悪液質によって命を落としていると報告されています」(高山教授)
がん悪液質になると、やせている姿を見られたくない、食べられなくなったことを知られたくない、という気持ちから、知人と会ったり外食することを避けるようになる。また骨格筋が減少すると、歩く速度が落ちたり、歩行が困難になるなど、日常生活にも支障が出てくる。
さらに食欲不振は、家族間の軋轢を招くこともある。「食べさせたいのに食べてくれない」という家族の思いと、「食べたいけれど食べられない」という患者の思いが対立する。
家族間のストレスをなくし、社会的に孤立せず、QOLを落とさないためにも、がん悪液質はできるだけ早い段階で治療に取り組むことが重要なのだ。
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