元公安警察官は見た 飲酒運転で一晩に6件の物損事故を起こして逃走した“不良外交官”の末路
一夜に5、6件の物損事故
「外交官を逮捕できない代わりに、プロトコール・オフィスはペルソナ・ノン・グラータ(PNG、好ましからざる人物)に認定することができます。『外交官として好ましくないので、この国から退去してください』と通告されると、48時間以内に退去しないと、外交官の身分証明書が無効になり、外交特権が消滅して逮捕されることになります。もっとも、日本政府がこれまでPNGを発動した例は4件しかありませんがね」
その後、勝丸氏が警視庁に出勤すると、一等書記官の上司にあたる領事から連絡があったという。
「領事が一等書記官に問い正したところ、事故を起こしたことを認めたそうです。本人は反省していて、与えた損害は退職金を前借りしてでも全額弁償するとのことでした。ただし、大使にこの不始末が知れるとまずいので、大使には内緒にして欲しいと言うのです」
結局、大使が出張で不在となる日に、交通課の警察官が大使館に出向いて事情聴取を行った。
「一等書記官は40代前半で、流暢な日本語を話し、いかにもエリート然としていました。
管轄署の調べで、事故のあった夜、同じ管内で計3台の車に当て逃げしていたことが判明しました。警察官が『こんな運転しちゃうってことは、お酒でも飲んでたんですか?』とさりげなく質問しても、表情を変えず、否定も肯定もしなかったそうです」
最終的には物損事故を計6件起こしていたことが判明し、任意保険で全額賠償したそうだ。
「アメリカや韓国の外交官は、飲酒運転には気をつけています。ところがロシアやカザフスタンなどの中央アジアの外交官は、飲酒しても2、3時間経てば醒めると思っているので、飲酒後、平気で車を運転することがよくある。本国ではそれが常識ですから、日本でも同じことをやっているんです。外交特権という錦の御旗があるので、やりたい放題です。そんな輩には、プロトコール・オフィスへの通報をちらつかせるしかありません」
ブループレートの車は国内で約2000台ある。交通事故だけでなく、駐車違反も多発していて、2019年は2615件で、違反金の未納が75%にものぼった。外務省が大使館幹部に注意を促したところ、2020年の駐車違反は1137件にまで減少したという。
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