元公安警察官は見た 飲酒運転で一晩に6件の物損事故を起こして逃走した“不良外交官”の末路

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 日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。この9月『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、交通事故を起こしても日本の法律を無視する外交官について聞いた。

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 日本に駐在する大使館員や領事館員の公用車や私用車に発行されるナンバープレートは、関係者の間で「ブループレート」と呼ばれている。青地に白で「外」の文字が入ったナンバープレートと、白地に青で「領」の文字が入ったナンバープレートの2種類ある。近年、ブループレートの車の交通事故や交通法規違反が増えているという。

「深夜、東京・港区の交差点で、1台の乗用車が停止していた車に追突する事故を起こしました」

 と語るのは、勝丸氏。当時、公安外事1課の公館連絡担当班だった同氏は、主に大使館や総領事館との連絡・調整をしていた。

「運転していた男性は車を降りると、ぶつけた車のドライバーと少しだけ話をしたものの、相手が携帯電話で110番している間にそのまま走り去ってしまったのです。被害者は車で後を追い、逃げた車のナンバーを確認して警察に通報。『外』ナンバーの車であることが判明しました」

プロトコール・オフィス

 所轄の警察官が現場に急行した。

「被害者の話によると、逃げた男はアジア系の外国人で、息が少し酒臭かったそうです。所有者は旧ソ連から独立した某国の大使館に勤務する一等書記官でした。一等書記官の自宅近くの駐車場で件の車が見つかり、警察官が車体を調べたところ、バンパーが潰れて前照灯も片方壊れ、複数回衝突した痕があったそうです」

 相手が外交官でなければ、警察官が家に出向いてアルコール検知を行い、その場で逮捕もありうるケースだった。

「ウィーン条約により、外交官の自宅も不可侵となっています。そこで捜査中の警察官から私のもとへ連絡がありました。私は実況見分や事故現場周囲の防犯カメラの収集を指示しました」

 事故の状況を概ね把握した後、勝丸氏は某国大使館の領事に電話を入れた。

「私は領事に『これは重大な法令違反ですよ。一等書記官が車を運転していたのなら、我々の捜査に応じてくれないと、大使館に対して正式に出頭要請することになります。その場合、最終的には外務省のプロトコール・オフィスにも報告が行くことになります』と伝えました。すると彼はあっさり『わかりました。本人と話してみます』と答えました」

 プロトコール・オフィスとは、外務省大臣官房にある儀典官室の英語名。儀典官室は社交場の儀礼を統括する部署だが、在日外国公館の接受も担当し、外国公館のお目付け役のような存在だという。そのため、日本に駐在する外交官は、ここに通報されることを嫌うという。

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