輪転機大手「東京機械」の買収防衛策に投資会社が激怒 裁判所も判断先送りの異常事態
思わぬ展開に
かつてない買収防衛策の是非を、裁判所すら判断できずに先送り――。
投資会社「アジア開発キャピタル」による新聞輪転機大手「東京機械製作所」(以下、東京機械)の株式買い増しをめぐる対立が、思わぬ展開になっている。
すでに4割近くの株式を握られている東京機械は、8月に導入した買収防衛策を10月22日の臨時株主総会(株主意思確認総会)で承認を得、今月の末に発動する予定だった。一方、この買収防衛策について、納得のいかないアジア開発キャピタルが東京地裁に差し止めの仮処分を求めていた。この手の裁判はたいてい、案件のスケジュールを加味して判断がくだされるため、22日の株主総会の前には結論が出されるはずだった。それが一転、株主総会後へ判断が「先送り」されることとなった。
司法判断が出なかったことで東京機械は10月13日、買収防衛策発動の日取りを「後ろ倒しにする」と発表せざるをえなかった。
そんなのありか……
異例の展開の背景には何があるのか。
アジア開発キャピタルの傘下で投資事業を手掛けるアジアインベストメントファンド(以下、アジア社で統一)が、東京機械の株式を急速に買い始めたのは6月のことだった。経済記者が解説する。
「アジア社の東京機械株保有比率は7月中旬に15%を超え、筆頭株主になりました。8月2日には34.06%に達し、拒否権を発動できる3分の1を超えてしまいました。慌てふためいた東京機械は同月6日、買収防衛策の導入を決めました。ここまでは、強硬なアクティビストなどに狙われた会社がよく採る対抗策です。昨年は旧村上ファンド系の会社に狙われた東芝機械(現・芝浦機械)が買収防衛策を導入・発動したし、最近でもSBIホールディングスに敵対的TOBをかけられた新生銀行が同様の動きを見せています。東京機械が採った策が前代未聞と言えるのは、ここから先です」
その妙手は、8月30日に東京機械が出したリリースで明らかになった。臨時株主総会においては、アジア社を「本議案との関係で特別の利害関係を有する」ことから「承認可決要件の計算から除外して取り扱う」としたのだ。
「つまり、アジア社には議決権行使をさせないという異例のスキームです。4割を保有しているアジア社は当然、買収防衛策の発動に反対する。そうなれば承認に必要な(出席株主の)過半数を得るのは難しい。そこでアジア社を議決権の分母から除外するという前代未聞の強行策に出たわけです。このスキームをひねり出したのは、買収防衛策に強い西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士。日本の元祖アクティビストである村上世彰氏の天敵として知られる大物です」(先の経済記者)
そんなのありか……とアジア社は激怒し、9月、東京地裁に買収防衛策の差し止めと臨時株主総会で議決権行使を認める仮処分を出すよう申し立てた。「著しく不公正な方法」「株主平等の原則に反する」と憤懣やる方ない様子が、申立書から読み取れる。
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