巨人「巨額資金」がドブに消えた…コスパが悪すぎる“補強戦略”の大問題

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バレンティンも獲得か

 さらに、危険を感じるのが今後の補強だ。巨人は過去にも優勝を逃すと、とにかく大型補強に走る傾向が強く、今年のオフもそうなる可能性は否定できない。それが的確な補強であれば良いが、とにかく“目先の弱点”を補うために「獲れる選手はとりあえず獲得する」という手当たり次第の補強になることが多いのだ。

 記憶に新しいのが2016年のオフのこと。2年連続で優勝を逃したことで山口、森福允彦、陽と3人の選手をFAで獲得し、トレードでは日本ハムから吉川光夫と石川慎吾が加入。さらに、楽天で以前活躍していたマギーも獲得している。

 しかし、結果として、17年のシーズンで、主力に相応しい活躍を見せたのはマギーだけ。チームの成績は、前年の2位を下回る4位に終わったのだ。今年も大瀬良大地、九里亜蓮(ともに広島)、又吉克樹、祖父江大輔(ともに中日)、梅野隆太郎(阪神)、宮崎敏郎(DeNA)などが国内FA権を初めて取得し、その去就が注目されている。彼らが権利を行使すれば、巨人が大型契約を提示する可能性は高いだろう。これに加えて、今年で契約が切れる中日の4番ビシエドや、先日ソフトバンクを退団した、かつての本塁打であるバレンティンの獲得に動くことも十分に考えられる。

「育成の巨人」復活を目指して、多くの育成選手をドラフトで獲得し、新たなファームの球場や練習施設を建設するなど、自前で選手を育てる動きがあるのは大きなプラスとなりそうだが、現在のような“節操がない補強”を繰り返せば、若手を抜擢する機会を奪うことになる。そういう意味では、育成面においても極めて「費用対効果」の悪い戦略と言われても仕方がないだろう。

 巨人の将来のためには、実績のある選手の獲得を封印して、生え抜き選手の育成に大きく舵を切ることも必要ではないだろうか。このオフに、巨人がどのような動きを見せるのかに注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月19日掲載

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