ドイツ「10代の投票率」は70% 30%の日本と違い過ぎる教育文化にその秘密がある
学校にも警察を呼ぶドイツ人
それでは、これらの学校教育の違いはどこからやってくるのだろうか。
筆者には、両国では社会における学校の位置付けがそもそも違うように感じられる。その違いを一言で表せば、日本の学校は「社会に出るための練習場」であるのに対し、ドイツの学校は「実社会そのもの」なのである。
例えば、クラス内で財布やスマホなど貴重品の盗難が発生したとする。日本では、まず担任や学年の先生が解決を図る。犯人が分かり次第、学校では反省文の提出や停学など何かしらの処分を下し、被害者と加害者それぞれの家庭と連携を取って生徒の精神的なフォローをしつつ、更生への道筋を作っていく。そうして生徒の成長と人格形成を図り、社会に送り出すのだ。他にも、備品の盗難、施設の破壊、いじめ問題など、様々な問題に対して日本の学校は治外法権的性質を持っていて、なるべく警察など外部の介入を避ける傾向がある。こうした点でも、まさに学校は社会に出るための練習場と言える。
一方で、ドイツの学校は至極単純である。生徒が名乗り出なければ学校が事件として扱い、警察を呼んで犯罪捜査をして犯人を突き止めてもらう。教師は授業をすることが仕事であり、事件を解決するのは警察の仕事という理屈だ。学校と警察の、職務における明確な役割分担と言える。また、校則もほとんど設置されておらず、その代わりに社会の法律の遵守が課せられる。学校もまさに実社会そのものというわけだ。
結局、日独の投票率の差は埋まるのか
両国の投票率に学校での政治教育が影響しているとすると、しばらくこの差は埋まらないだろう。教育基本法の存在以前に、社会における「学校の在り方」そのものがここまで違うのだから。
冒頭に紹介した19歳のドイツ人大学生は、今回の総選挙の結果を受けてこう嘆いていた。
「投票率が76.6%だって? それは4人中3人しか投票に行っていないということだよ……」
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