ドイツ「10代の投票率」は70% 30%の日本と違い過ぎる教育文化にその秘密がある
ドイツと日本――。互いにヨーロッパとアジアを代表する工業先進国として、何かと比較されがちな両国だが、国民性の違いは案外大きい。ドイツの高等教育で生徒と教師の両方を経験し、現在は日本の私立中高一貫校で教鞭を執る筆者が、10代の投票率の差から日独の教育文化の違いを分析した。
10代の投票率が約7割
9月26日に実施されたドイツ連邦議会選挙は、SPD(ドイツ社会民主党)が206議席を獲得して辛くも第1党になる結果となった。アンゲラ・メルケル首相の後を継ぐ政権運営に、19歳の大学生は、「私は保守派だからCDU(キリスト教民主同盟)の方が良かったけど、SPDのオラフ・ショルツ氏も悪くないと思う」
と結果をまとめ、非有権者である16歳の高校生は、「SPDが連立政権のパートナーとしてどの政党を選ぶのか注視する」と評価していた。ドイツの参政権は18歳以上であるが、投票する権利の有無に関わらず、「環境問題に対する政策を最優先に考えるべきだ」、「移民、難民に対する排他的な姿勢をとるべきではない」などと、10代同士でも選挙の話題が盛り上がる。
今回の総選挙での10代(18歳~20歳)投票率は現時点で未発表だが、前回2017年の総選挙では69.9%であった。全体投票率は17年の76.2%に対して今回76.6%なので、10代の投票率は今回もおそらく7割近いと思われる。
一方、日本においても10月31日に第49回衆議院議員選挙の投開票を控えている。投票率は国政選挙で毎回注目されるテーマのひとつだが、2019年参議院議員通常選挙の投票率は全体で48.80%、10代は32.28%であった。筆者は、今回も投票率に大きな違いはないと予想する。なぜ日独では投票率に圧倒的な差が生まれるのだろうか。
筆者の生徒である日本の高校3年生(18歳有権者)は、
「選挙には行くけど、政治を身近に感じることはない」
という。理由を聞くと、
「大雨や猛暑日に街頭へ繰り出して演説するとか、今の時代にまるで合わない手段だから」
どうやらデジタルネイティブ世代にとっては、現在の選挙スタイルそのものが古臭く感じるらしい。また、「私は投票していない」という元教え子の19歳の大学1年生は、
「政治について授業で習っていないので、投票するなら勉強して政策を理解してから行きたい」
と言っていた。関心はあるけれど、誰に投票したら良いのかわからないということか。
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