「ウンコは大事にしなきゃいけねぇ」 立川談志の大切な教え
落語界のレジェンド・立川談志さんが他界して今年で10年となる。多くの著作や音源などで、その偉大な功績を今も知ることができるのはありがたいところだが、名演や芸談ではない「普段の談志語録」や「いつもの談志師匠」の姿を知ってもらいたいと、談志さんのもとで16年半もの間、前座として仕えた立川キウイさんが『談志のはなし』(新潮新書)を刊行した。意外なエピソードと共に、談志さんの意外な素顔を3回にわたってお届けしたい。第1回は「ウンコは大事にしなきゃいけねえ」。(以下、引用は同書より)
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「ウンコは大事にしなきゃいけねぇ」
師匠はウンコを大事にされてました……って別に変な趣味じゃありませんよ、念のため。
「ウンコは大事にしなきゃいけねぇ」
それで散歩がてら、バー美弥(師匠御用達の銀座のバー)へ立ち寄るつもりで、フラリと帝国ホテルへ。
やはり帝国ホテルはトイレも綺麗で立派。そこで師匠は優雅に用を足すと。
「いいもんだよ、週刊誌や新聞なんざ落ち着いて読めて」
わざわざ家から帝国ホテルに行って、それで帰りに美弥に寄ってJ&Bのハイボールをチビリ。
「こういうのを、本当の贅沢っていうもんなんだ」
師匠からそう言われると、ホントそうだよなと思います。
「第一、ゼニがかからなくていい」
うん、それを聞くとやっぱり師匠だなって思います。
でも冗談ではなく、たしかにそうですよ。トイレだけなら泊まらなくてもリッチな気分を味わえるし、そしてスッキリした後、馴染みの店で落ち着いて酒を呑む。良い一日の終わりの迎えかたです。
「師匠、今日はどちらに行ってたんですか?」
美弥でお客さまから話しかけられたりします。
「帝国ホテル」
実に聞こえはいいです。するとお客さまも感心するんですよ。
「へ~、帝国ホテルですか。いや、さすが師匠です。取材か何かですか?」
「今日はね、子母澤寛を読みに、いつもはウチにくる週刊誌なんだが、今日は『父子鷹』を昨夜から読み直してたんで続きだ」
「へ~、本を読むために帝国ホテルへ? こりゃ恐れ入りました」
満更でもない師匠の顔。たしかに会話に誤りは何もありません。ただズボンをおろしてるかどうかまではお客さまも知りません。すべて事実ですしね。
でもそういう豊かさもありますよ。僕も一度やってみましたが、何か気持ちが広くなって新鮮な感覚でした。当たり前にするとクセになるかもしれません。
ただ師匠が一度、とても悔しがってたことがあります。美弥のマスターに言ってました。
「いつものように帝国ホテルで済まそうとしたら、急にもよおしてきたんで途中の○○ホテルでやったら、春さん、ダメだあすこは」
「そんなにダメなの?」
「前の奴が流してなかった。やっぱり客の質が違う」
師匠はウンコをするのも大事にしてました。しかしそれは良いことですよね。ウンコにも感謝。だって出てこなくなったら困りますもん。
ちなみに師匠の良いウンコの定義とは。
「拭いたとき紙につかない」
今やウォシュレットが当たり前ですから、時代を感じます。