【池袋・暴走事故】被告収監に「京都・亀岡暴走事故」遺族の父・中江美則さんが感じたこと
免許を持ってないのに「運転技能を有する」
「アクセルとブレーキを踏み間違えるというのは運転技術を有しない、免許を持つレベルに達していないということだと思います。飯塚被告は免許を持っていたわけですが、本当にその資格があったのか、そのあたりも厳しく見てもらうべきではなかったかと思っています」(中江さん)
中江さんがこの点にこだわるのには理由がある。
中江さんの愛娘が巻き込まれた事故で、京都府警と京都地検は自動車運転過失致死傷罪より罰則が重い危険運転致死傷罪の適用を念頭に置いていた。しかし、その成立要件に無免許運転が盛り込まれていないなどで立件断念を余儀なくされてしまう。
しかも、無免許運転の常習犯だったことがかえって加害者の少年に有利に働くという不条理な法解釈までされてしまった。
「加害者は免許を取得したことがないのですが、運転には慣れていたために“技能を有する”という解釈をされてしまったのです」
危険運転致死傷罪が成立する要因として「未熟な運転技術」というものがあった。ところが無免許でも運転を繰り返していたがゆえに、加害者の技術は未熟とは言えない、という理屈だ。
「曖昧な法律だと思いましたね。免許を持ってないのに運転技能を有するというわけのわからない理屈で闘うことになったのは、私たちにとってあまりに残酷でした」
法律は弱い者のためにあってほしい
さらにこんな指摘もする。
「できれば知っておいてもらいたいのでお話ししますが、飲酒運転をしていても、危険運転致死傷罪が適用されないことが結構あるんですよ。アルコールの血中濃度が基準値に達していないとか、やはりボーダーラインがありましてね。ただ、飲酒運転も無免許運転もやってはいけないことは誰もがわかっていることだし、人を殺す可能性があるわけだから、悪質か否かの判断はそんな難しいことではないと思うんです」
法律は弱い者のためにあってほしい、悪人が罰を逃れるためのものではよくない、法律のロジックにはついていけないところがある――そう語る中江さんには次回、2012年の事故で服役し出所した元被告への思いについて語ってもらう。