日曜劇場「日本沈没」が好スタートの理由 他のドラマとますます開く製作費格差
10日にスタートしたTBS「日曜劇場 日本沈没-希望のひと-」(午後9時)が、初回から高視聴率をマークした。世帯15.8%、個人全体9.7%。コア値(13~49歳)も10月第1週(4~10日)に放送された民放ドラマの中で最高だった。どうして好発進したのか。なぜ、「日曜劇場」は強いのか(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。
「日本沈没」の初回視聴率は大好評のうちに終わった前作「TOKYO MER・走る緊急救命室」の初回を超えた。「TOKYO MER」の初回は世帯14.1%、個人全体8.2%だった。
「日本沈没」が高視聴率を得た理由はSF作品、近未来予言作品などの色を極端なまでに薄め、日本を救おうとする主人公・天海啓示(小栗旬、38)を中心とする人間ドラマにしたからに違いない。天海は環境省に勤務するエリート官僚である。
初回の終盤、天海は田所雄介博士(香川照之、55)による関東沈没説を封印しようとした政府関係者と官僚の前で声を張り上げた。
「確かに関東沈没はこの国にとって不都合極まりない話だ! だからといって、その議論にフタをしていいわけがない!」
不都合な真実が隠されがちなのは現実社会と全く同じ。だから、関東沈没説の信憑性は別とし、リアリティーを感じさせた。
理想像を見たい一面も?
田所は国による地下開発(COMS=コムス)と地球温暖化から関東沈没を予測していたが、天海以外の官僚たちは日本社会独特の事なかれ主義で黙殺した。だからこそ異端の官僚・天海の言動は痛快だった。
「日本の未来はわれわれにかかっているんです」(天海)
現役の経産官僚2人が、あろうことか給付金詐欺を働く時代。現実の官僚に視聴者は幻滅しているから、ドラマの中で官僚の理想像を見たい一面もあるのではないか。
脚本は橋本裕志氏(59)。過去に「官僚たちの夏」(2009年)や「運命の人」(2012年)などを手掛けている。政治家や官僚を描くのに長けた人だ。
初回が高視聴率を得たのは故・小松左京さんが書いた原作(1973年)の力でもあるだろう。この小説は上下巻で385万部という空前のベストセラーを記録した。ドラマは現代風にアレンジしてあるが、日本人が未曾有の危機に遭遇するという核心部分は変えられていない。人々が沈没の危機に立ち向かうところも一緒だ。
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