ガソリン1リットル=200円の現実味 “脱炭素”で近い将来深刻な供給不足も

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ガソリン価格の半分を占める税

 資源エネルギー庁が発表した全国のレギュラーガソリンの平均価格(10月11日時点)は1リットル当たり162円を突破している。160円台は2018年10月以来、3年ぶりの高値だ。当面上昇傾向が続きそうで、「年内に170円まで上昇する可能性がある」との予測が出ている。

 そもそもガソリンの価格はなぜ変動するのだろうか。

 ガソリンは原料となる原油を輸入し、それを石油元売り会社が精製して、ガソリンスタンドなどへ運ばれる。価格が変動する主な要因は、原油価格と為替によるものだ。

 原油価格は、産油国の生産動向や国際的な紛争(いわゆる地政学リスク)などに大きな影響を受ける。ドル建てになっていることから、円安になれば日本に輸入される原油価格は上昇する。

 ガソリン価格を考えるに当たって見逃せないのは税金だ。ガソリンには消費税はもちろんのこと、ガソリン税など数種類の税金がかかっており、これらの税金はガソリン価格の約半分を占めている。

 このことは原料である原油の価格が2倍になっても、ガソリンの価格は1.5倍程度の上昇にとどまることを意味する。かつてはガソリンスタンドなどの「薄利多売」戦略により、原油価格が上がってもガソリン価格が追随しないという状況も散見されていた。

石油元売り会社は現在5社

 だがこの20年ほどでガソリンを巡る産業の構造は大きく変わった。

 20社ほどあった石油元売り会社は、現在では5社に集約され、ENEOSと出光興産の上位2社で8割のシェアを占めている。ガソリンスタンドも1994年度をピークに右肩下がりとなり、2019年度末時点では2万9637カ所と半減した。

 このように石油元売り会社の統合・再編やガソリンスタンドの減少によって、販売戦略が「利益重視」に変わったことで、原油高はそのまま製品であるガソリンの価格に反映されやすくなった。

 このためガソリン価格が下がるには「原油価格が下落するか」、「円高が進行するか」のどちらかの条件が必要となる。為替については、日米の金利差拡大の拡大観測などで円安が続いている。気になるのは原油価格の動向だ。

 足元の原油価格は1バレル=80ドル台で推移している。2014年10月以来の高い水準だ。年初から約50%上昇している。

 新型コロナウイルスのパンデミックで急減した原油需要が順調に回復しているのにもかかわらず、主要産油国の供給拡大のペースが鈍いことが主な理由だ。

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