緊急事態宣言が解除されても…「鉄道フェスティバル」3年連続中止の重要な意味
10月1日、緊急事態宣言が全面的に解除された。これに伴い、都道府県をまたいだ移動の自粛や飲食店の営業時間短縮が緩和。翌2日からの週末、そして翌週の週末も多くの人たちが地方へと出かけている。
昨年、新型コロナウイルスの感染拡大により、観光事業者・飲食事業者・交通事業者などが大打撃を受けた。特に、年間3000万人を超す勢いで増加していた訪日外国人観光客で潤っていた地方の観光関連産業の落ち込みは想像を絶した。
そうした観光関連産業を救済するべく、政府は約1兆6000億円超という事業予算をつけたGoToキャンペーンを2020年10月1日からスタート。しかし、大規模な移動を伴うGoToトラベルはコロナの感染を拡大させかねないとの批判が殺到。わずか3か月後の12月28日に終了してしまうという、粗末な結果で終わった。
当時とワクチン接種が進んでいる昨今では状況が大きく異なる。そうした判断もあり、自民党を中心とした政治家たちからは再びGoToキャンペーンを求める声が上がり始めている。
すぐに訪日外国人観光客が戻ってくることは見込めない。それだけに、地方都市の観光関連産業はGoToキャンペーン再開への期待が大きい。そうした声は観光地の宿泊施設や飲食施設のみならず、JRをはじめとする鉄道事業者たちからも聞こえてくる。
定期外利用者の拡大
静岡県湖西市の新所原駅と掛川市の掛川駅とを結ぶ天竜浜名湖鉄道(天浜線)は、今年3月に公開されて大ヒットを記録した映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の舞台のモデルとされる。通勤需要が少ないローカル線は生き残りのために、定期外利用者の拡大に力を入れる。定期外利用者とは、平たく言えば観光客・行楽客だ。
そのため、多くの聖地巡礼者を呼び寄せるコンテンツを最大限に活用する。天竜浜名湖鉄道にとって、映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の舞台というのは最大限の売り文句だった。
天竜浜名湖鉄道は、「転車台&鉄道歴史館見学ツアー」を毎日開催し、誘客を図った。しかし、緊急事態宣言の発令でツアーは中止。全面解除を受けて、10月1日から再開した。
JR西日本も10月8日から「JR西日本どこでもきっぷ」を発売。同きっぷは、旅行代理店のみで扱う2日間用と窓口でも扱う3日間用があり、JR西日本全線と智頭急行線、JR西日本宮島フェリーが乗り放題となる。普通車指定席にも6回まで乗車することが可能だ。こうしたお得なきっぷなどで利用者の掘り起こしを急ぐ。
緊急事態宣言の全面解除を受けて、沸き立つ鉄道事業者は西日本側で目立つ。それは、定期外利用者の需要を取り込みたいという意欲の表れと言えるだろう。
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