なぜ私たちは氷川きよしから目が離せないのか 「演歌界のプリンス」から「時代のアイコン」へ

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「演歌界のプリンス」から「時代のアイコン」へ。氷川きよしさんの変化と進化はめざましい。ヒット曲同様に「限界突破」した美しさや華やかなステージ衣装は連日ネットニュースに。力強い歌唱力や細やかなファンサービスもさらにレベルアップし、今では若い世代からも支持を集めている。今年の東京五輪開会式は、氷川さんがドレス姿で東京五輪音頭を歌うのもアリだったのではないかと思ってしまう。

 かつては「僕」だった一人称も「私」になり、美容についての発信も増えた氷川さん。インスタでもフェミニンなポージングや表情が目立つ。つい先日発表されたCMでは、「どちらかひとつを選ぶ時代は終わった」との決めゼリフを披露。これは今の氷川さんの立ち位置を意識して作られたセリフだろう。「男なのか女なのか」「男が好きなのか女が好きなのか」という、ちょっぴり下世話な世間の疑問をふまえての演出だろうということだ。

 氷川さん自身は、「どちらかは答えません」というスタンスに近い。そもそも有名人だからといって、自分の性自認や恋愛対象を世間に公表しなくても構わないのでは――やんわりとそう主張しているように感じられる。演歌の王道たる男性らしさを求められたデビュー当時は苦しみ、男らしく生きて、と言われると自殺したくなっちゃうという言葉もかつては飛び出した。ただ最近の華麗なドレスやボンデージ姿のインスタ投稿でも、「押し付けられるもののない喜び」「私は私」と語るにとどめている。現在でもライブではタキシードや紋付姿で登場し、笑顔で熱唱する姿は変わらない。

 特定の相手や思想を切り捨てもせず、かといって余計なことも語らないスタンス。こうした氷川さんの姿勢は、古参ファンを守りたいという気遣いもあるのだろう。ただその副産物として、新規ファンもアンチも激増したと言えるのではないだろうか。

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