「さいとう・たかを」担当編集者らが明かす素顔と分業制の理由 最終回の構想は?

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 隠し金庫の中にその原稿は眠っている。鍵のダイヤル番号は作者しか知らない――。半ば“都市伝説”のように囁(ささや)かれてきた「ゴルゴ13」の最終回。作者のさいとう・たかを氏が、9月24日にすい臓がんによって84歳の生涯を閉じたことで、その内容が遂に明らかになるのか。

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 結論から先に言ってしまえば、「ゴルゴ13」は最終回を迎えるどころか、連載する漫画雑誌「ビッグコミック」の版元・小学館によれば、故人の遺志を継ぐ「さいとう・プロダクション」の面々によって、今後も執筆は継続していくという。

 そもそも、作者がこの世を去ろうとも新作が読者に届けられるプロダクション方式自体が、さいとう氏の“遺作”なのだ。物語の核となるシナリオ作りから作画に至る工程を複数のスタッフが分業することで、漫画家一人ではとても体がもたない長期連載を可能にした画期的な方式。それを編み出した氏は、若い頃から仲間を集めてワイワイガヤガヤ、創作活動することを好んでいたようである。

「巨人の星」「いなかっぺ大将」などの人気作で知られる漫画家の川崎のぼる氏が振り返る。

「僕より四つ年上のさいとうさんは、18歳で『空気男爵』という貸本漫画を出したことで、新聞に“独学で漫画家デビュー”と報じられましてね。漫画家に憧れていた中学生の僕が、その記事のことを周囲に話していたら、たまたま同級生のお姉さんがさいとうさんと知り合いだった。それでご本人を紹介してもらい、実際にお会いすることができて意気投合したんです。さいとうさんは僕や漫画が好きな友人たち5~6人を集めて『漫画愛好会』を結成し、大阪のさいとうさんの家でデッサンを描いたり、アイデアを出し合う勉強会を開いた。その後、さいとうさんから頼まれて背景などの作画のお手伝いをしてね。アパートを借りて寝食を共にしたこともありました」

 親分肌で面倒見がよく、他人への心配りを忘れない人だったそうだ。

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