盛り上がらない日本の「ライブコマース」 “35兆円市場”中国との3つの違い

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中国と日本、違いは

 なぜ、中国で盛んなライブコマースが日本では奮わないのか。中国のようなインフルエンサーが現れないのか――。ライブコマースのコンサルタント事業を手がける株式会社Tailor Appの松村夏海氏は、次のように分析する。

「中国と日本の違いには、ひとつには買い物における“信用度”の違いがあると思います。買い物環境が日本ほど整っていない中国では、インターネットショッピングが盛んですが、偽物や粗悪品を掴まされるリスクも日本よりはるかに高い。そのため、自分が信頼する人、つまりインフルエンサーを“信用”して買い物をする習慣が根付いたと考えられます。美容や家電など、そのジャンルに詳しい人物がお勧めするとなれば、なおさらです。」

 そうして生まれたインフルエンサーという立ち位置にも、中国独自のものがあるという。

「中国のKOLたちは、商品の紹介のみならず、自分の紹介先から購入すれば定価より安く買えることもPRします。いわばバイヤーのような立ち位置も果たしているのです。そうして商品が売れると、企業やメーカーからインセンティブを受け取れるという仕組み。ならば企業からのオファーで粗悪品を売ることもあると思われるかもしれませんが、彼らも彼らで自分の信用度で商売している以上、下手な商品を紹介すると、看板に傷がついてしまうわけです」

 日本の「テレビショッピング」に出演するタレントがモノを売ることもある。しかしその懐に入るのは、広告代理店、そして所属事務所の取り分を引かれての「ギャラ」だ。売り上げに応じてその額が変動することもなく、ゆえに「モノを売るコンテンツ」としての魅力も、ライブコマースのそれには及ばない。

「中国との違いでいうと、日本には、“おもてなし”という言葉に象徴されるような、接客文化が根付いていることがあると思います。リアル店舗に価値を見出す店を訪れて、店員さんの説明を受けて、購入を決める。一定の年齢以上の方にはこうした購買習慣がおなじみです。弊社ではライブコマースをつかった販促の方法をいくつか提案してきていますが、中国のようなやり方をそのまま日本にもってきても上手くいく可能性は低いと考えています。日本でとるべき戦略のひとつには、日本の特長を生かし、ネット上ではなく店舗に足を運んでもらうためにライブコマースを活用する手法ですね。ライブ動画を通じて商品やお店の魅力をPRし、来店を促す形です。日本ではライブ配信後の購入先の5割がネット通販ですが、同時に4割が店舗に足を運んでの購入なのです。この方法は、いくつかのショッピングモールなどでご活用いただいています。ゆくゆくは、ライブコマースの販売を専門とする、“コマーサー”育成の事業もやってみたいと思っています」

デイリー新潮取材班

2021年10月14日掲載

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