ある日突然「不倫相手」を喪ったアラフィフ男の涙 死後、彼女の携帯から着信が

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「映画」で意気投合

 だから他の保育園から転職してきた絵美さんに出会い、言葉を交わすうちに惹かれるようになった。たまたま絵美さんと映画の話になり、好きな作品が一致したことから話が盛り上がったのだ。

「それからは顔を合わせるたびに、『この映画観たことある?』と言うようになって。僕から『やっぱり映画は映画館で観たい。今度一緒に行きませんか』と誘いました。もちろん絵美は亜由美のことも知っているから『だって……』とひるみました。『妻は映画に興味がないんです』と言うと、『うちの夫もそうです』って。映画くらいいいじゃないですかと、僕にしてはかなり強引に誘った記憶があります」

 ちょうど3連休で、亜由美さんの両親が孫の顔を見に来ることになっていた。1日だけ昼間、抜けていいかと妻に聞くと「いいわよ、じいじとばあばと5人で遊園地に行ってくる」と言う。絵美さんにも当時、5歳になる子がいたのだが、連休は夫の両親の元へ行くことになっていた。

「私は義父母に嫌われているから来なくていいと夫も言ってる、と。それはそれで寂しい話なんだけど、当時の僕にはラッキーとしか思えなかった」

 連休中日、朝から映画館に行き、ランチをとりながら「猛烈に」映画の話をした。結婚当初からの欲求不満が一気に吹っ飛んでいくほど満足したと将太さんは言う。

「はっと気づいたら4時間もたっていました。映画だけじゃなくて絵美と一緒に芝居も観たい、おいしいものも食べたいと思いが募るような時間でした。心から『ありがとう。人生でいちばん楽しい時間だった』と言ったら、絵美は『おおげさね』と笑っていましたが、本当の気持ちだったんです」

 同時に「もっと親密になりたい」という思いが濃くなっていった。

逢瀬を繰り返し、そして…

 絵美さんも同じ気持ちだったのだろう。なんとかふたりきりになれる時間を作ろうと、ともに策を練った。

「それぞれ共働き家庭ですから、やはり夜の時間帯はむずかしい。連休とか、僕が代休をとれる日とかを彼女に早めに伝えて、彼女もなんとか時間をやりくりする。そういう感じで会うようになりました。妻には『今日、午後から代休だからジムに行く』とか『ちょっと実家に寄ってくる』とか、たくさん嘘をつくようになりましたが、妻はほとんど疑いませんでしたね」

 最初に映画館に行ってから3回目のデートで、ふたりはごく自然にホテルへ行った。穏やかな気持ちで腕枕をしながら、こうしなければいても立ってもいられないような気持ちだったと将太さんが言うと、「私も」と絵美さんは笑ったという。

 つきあいを続けていく過程で、彼女にはもう両親がいないこと、兄がひとりいるが10年以上も音信不通であることなどを知った。

「『うちは早死にする家系みたい』と言っていたのを思い出します。両親に早く死なれて、しかも夫の両親には来なくていいと言われてしまうなんて……。不運な境遇なんですよね。そういう話を聞くにつれ、僕といる時間が彼女にとって少しでも救いになればいいなと。いや、それ以上に僕が彼女に惹かれていたんですが」

 次男が生まれてから、妻との夫婦生活はほぼなくなったと将太さんは言う。だからこそ絵美さんには心身ともに魅せられた。相性がよかった、と将太さんは耳を赤くした。

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