日大の田中理事長に捜査の手が伸びるか 独裁体制を許す学校法人の構造的問題点
捜査関係者の間で「疑惑のデパート」
日本大学の医学部付属板橋病院の建て替え工事を巡る背任容疑事件で、日大の井ノ口忠男理事(64)と大阪市の医療法人「錦秀会」の藪本雅巳・前理事長(61)が10月7日、東京地検特捜部に逮捕された。特捜部は9月8、9日に日大の本部や子会社の「日本大学事業部」(世田谷区、以下日大事業部)、田中英寿理事長の自宅や理事長室、錦秀会の関係会社などを一斉捜索していた。強制捜査から1カ月、2人の逮捕に至ったが、捜査関係者の間で「疑惑のデパート」と言われる日大の不正問題は、今後、大学のトップである理事長にまで捜査の手は及ぶのか、と注目されている。
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大手新聞の社会部デスクが解説する。
「逮捕された井ノ口容疑者は、田中理事長の側近中の側近です。2018年にアメフト(アメリカンフットボール)の悪質タックル問題が起きた時は、同部のコーチでした。世の中が大騒ぎになり、常務理事でアメフト部の監督だった内田正人氏が矢面に立ちましたが、実際、井ノ口容疑者の方が選手に口止めするなど、積極的に隠蔽に関わったと言われています。当時、井ノ口容疑者は日大の理事と日大事業部の事業企画部長も兼ねており、責任を取る形で2018年7月に両方とも辞任しました」
日大の資金が日大理事に還流
そんな人物がいつの間にか、日大事業部の取締役と理事に復帰していた。
「アメフト問題では理事長の責任を問う声もありましたが、田中氏は一切表には出て来ず、うやむやのまま時間が過ぎました。井ノ口容疑者が、理事長を守り抜いたということでしょう。そして、1年あまりで2019年12月に日大事業部の取締役として復帰、2020年9月には日本大学の理事に返り咲いたのです」(同)
不正は、井ノ口容疑者が日大事業部の取締役に復帰したのとほぼ同時に始まっている。
「日大は2019年12月に板橋病院の建て替え工事の設計・監理業者を選ぶプロポーザル業務を日大事業部に委託しました。プロポーザルに参加した4社のうち都内の設計事務所を日大事業部が選び、日大は2020年4月に24億4千万円でその設計事務所と契約。その一部として約7億3千万円を7月に日大事業部へ支払ったのですが、このうち2億2千万円が、籔本容疑者が全額出資した実体のないペーパー会社にコンサルタント料名目で送金されていたのです。さらに藪本容疑者側から井ノ口容疑者の知人のコンサル会社などいくつかの会社を経て、2500万円が理事に復帰していた井ノ口容疑者に渡ったと見られています。日大の資金が日大理事に還流した格好になり、背任にあたる、という構図です」(同)
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