問題行動で契約解除も…… ドラ1入団でも入団5年以内に戦力外通告された6人の投手

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「コイツは変わるかも」

 戦力外通告後に進展があったパターンも2例あげたい。まずは福岡ソフトバンクホークスの吉住晴斗。鶴岡東(山形)の2年生だった16年夏に甲子園に出場。初戦で1回を投げ、敗北を喫したものの、身体能力の高さを買われて17年のドラフト会議で福岡ソフトバンクから1位指名された。

 最速151キロのストレートにスライダーや緩急をつけたチェンジアップが武器の本格派右腕だったが、プロ1年目は3軍での登録となった。25試合に登板し、3勝9敗。防御率6.69という成績で、まずはプロに慣れるところから始めた。しかし2年目も3年目も2軍で結果を残せず、1軍登板すら出来なかった。

 そして3年目となる20年オフ、ついに球団から支配下契約の解除と育成契約の打診を受けた。当初、吉住は現役引退を考えていたというが、チームメートで育成出身の石川柊太が親交のあるダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)に連絡したことで風向きが変わる。ダルビッシュから直接吉住に対して「ドラ1で3年で引退するのはもったいないんじゃないの?」と連絡があったのだ。直接の面識はなかったものの、大投手からの問いかけに心機一転頑張ろうと決意した吉住は、球団からの育成契約を受け入れたのである。同時にサイドスローに転向、再び支配下登録を目指し試行錯誤を繰り返す日々を送っている。1軍で投げることがダルビッシュへの一番の恩返しとなるはずだ。

 もうひとりは、東北楽天ゴールデンイーグルスの17年のドラ1大卒右腕・近藤弘樹である。身長186センチ・体重96キロという恵まれた体格から投げ込む最速153キロの直球と多彩な変化球を操る本格派右腕とし、岡山商科大1年のころからスカウトに注目されていた選手だった。

 当然のように即戦力として期待され、1年目の6月に早速1軍で先発登板を果たしている。ところが5回の投球中に右足にけいれんを発症し、降板。5回6被安打2失点で敗戦投手となってしまう。その後も目立った活躍が出来ず、1年目は防御率6.83、2年目は8.68、そして3年目は5.40という低調ぶり。勝ち星なしの4敗1ホールドという成績しか残せなかった。

 結局、プロ3年目の20年オフに戦力外通告を受けることとなるのだが、東京ヤクルトの1軍投手コーチに就任したばかりの伊藤智仁が「コイツは変わるかもしれないので、獲得してもらえませんか」と球団のフロントに打診。育成選手として移籍することとなったのである。今シーズン開幕前の3月には支配下契約に移行し、開幕1軍入りを決めている。救援投手として起用され、開幕14試合連続無失点を記録するなど、交流戦前までにチームトップの22登板を果たしていたが、残念なことに右肩の肉離れで1軍登録を抹消されてしまった。早期の復帰が望まれている。

 最後は戦力外通告でない形でチームを去ったドラ1選手――読売ジャイアンツの11年の高卒左腕・松本竜也だ。英明(香川)のエースとして11年の夏の甲子園に出場。2回戦で敗退したものの、最速146キロの直球を武器に18回を投げ、失点3、自責点1、奪三振20をマークした。193センチという高身長からついた異名は“英明のランディ・ジョンソン”。プロ歴代最高身長のサウスポーとして話題となった。

 だが、注目を浴びたのはここまで。入団後の4年間は故障を繰り返し、1軍登板を果たすことが出来なかった。それだけならまだしも15年オフに野球賭博に関与していたことが発覚。不祥事で再びその名がクローズアップされてしまう。

 結局、日本野球機構から無期失格処分の裁定が下されてしまい、球団との契約も解除を余儀なくされてしまった。現在も失格選手となっているが、現役中にあれだけケガに悩まされていたことを考えると、遅かれ早かれ戦力外通告を受けていたのではないだろうか。

 果たして今年のドラフトで指名される選手たちは何人がプロで大成するのだろうか。

上杉純也

デイリー新潮取材班編集

2021年10月11日掲載

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