テレ朝が平日19時台の“フライングスタート”にあっさり見切りを付けたワケ
テレビ朝日は平日午後7時台の番組を15分繰り上げて開始する「フライングスタート」を9月末でやめ、月曜から木曜の番組開始時刻を同7時に戻した。金曜の「ザワつく!金曜日」も10分繰り上げに変更した。2020年10月に行なわれた大改革は僅か1年で雲散霧消した(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。
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テレ朝が1年前に平日午後7時台の番組を15分繰り上げた目的は、言うまでもなく視聴率のアップ。ゴールデン帯(午後7時~同10時)の強化を目論んでいた。
他局が軒並みニュースをやっている午後6時台のうちに同7時台のバラエティ番組を始めてしまい、視聴者を獲得するという戦略だった。文字どおりフライングスタートである。
もともとテレ朝のゴールデン帯の番組は強い。けれど、フライングスタート導入前の2019年度の視聴率争いでは世帯も個人全体も2位。ゴールデン帯のトップはどちらも日テレだった。
日テレは全日帯(午前6時~深夜0時)とプライム帯(午後7時~同11時)もトップで視聴率3冠王。テレ朝としてはプライム帯の入り口でもある午後7時台のアドバンテージを握ることで、日テレに追いつき、追い抜こうとしたようだ。
目に見える効果は生まれず…
テレ朝のフライングスタート導入前の2019年度のゴールデン帯の世帯視聴率は次の通り。
■世帯
(1)日本テレビ11.6%
(2)テレビ朝日10.8%
■個人全体
(1)日本テレビ7.2%
(2)テレビ朝日6.2%
フライングスタートが導入され、その結果が半年間(2020年10月~2021年3月)にわたって反映された2020年度のゴールデン帯の視聴率はこうだ。
■世帯
(1)日本テレビ11.5%
(2)テレビ朝日10.8%
■個人全体
(1)日本テレビ7.0%
(2)テレビ朝日6.1%
満を持して始められたはずのフライングスタートだが、視聴率は導入以前とほとんど変わらなかった。
さらに、2021年度に入った今年4月から先月下旬までのゴールデン帯の視聴率はどうだったかというと、世帯は2位のままで10.2%だったものの、個人全体は5.7%に落ち、3位に後退してしまった。
残年ながら、フライングスタートは目に見える効果を生まなかった。「ザワつく!金曜日」以外、午後7時スタートに戻したのもうなずける。
最近の視聴率を見てみたい。フライングスタートを解消する直前の9月27日月曜日に放送された「帰れマンデー見っけ隊!!」の繰り上げ部分15分の世帯視聴率は世帯6.6%。個人全体は3.3%だった。
この15分の視聴率は午後7時台とは別にカウントされていた。スポンサー、ネット局が午後7時台の本編とは違ったからだ。本編の「帰れマンデー見っけ隊!!」の視聴率は世帯10.1%。個人全体は5.5%だった。
繰り上げ部分15分が本編の視聴率を引き上げたわけではないようだ。なぜなら、繰り上げ部分15分の前に放送された同27日の「スーパーJチャンネル」第2部(午後5時50分~同7時)の視聴率は世帯7.0%、個人全体3.5%。こちらのほうが、数字が上だったからだ。
繰り上げ部分15分の競合番組だった日テレのニュース「news every」3部(午後5時53分~同7時)の同27日の視聴率は世帯11.0%、個人全体6.2%。繰り上げ部分が他局のニュースを食ってしまうのが理想型だったが、実際には歯が立たなかった。
翌28日の「家事ヤロウ!!!SP」の繰り上げ部分15分の視聴率は世帯5.6%で個人全体は5.1%。「スーパーJチャンネル」第2部は世帯6.4%、個人全体3.2%。本編の「家事ヤロウ!!!SP」は世帯9.4%、個人全体5.1%で、構図は27日と同じだ。
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