「一晩に70回は仮死状態」 芋洗坂係長が明かす睡眠時無呼吸症候群の恐怖、いびきが離婚の遠因にも
バイクを運転中に……
しかし、前出の「旅館事件」を経て、更に5年後のこと。決定的な出来事が起こる。
稽古に向かうために、バイクを運転していた時のことだ。
「交差点で信号待ちをしている時、何と眠ってしまったんですよ。信号が変わっても起きない。後ろに乗っていた友達にパコンと頭を叩かれて気が付き、事なきを得ましたが、もしあれが走行中だったらと考えると……本当に恐ろしい。それで慌てて大学病院に診てもらいに行ったんです」
簡易検査キットを渡され、自宅で一晩、睡眠時の呼吸の回数や時間などを測った。そこで下された診断が「睡眠時無呼吸症候群」。
眠っている時に喉など上気道が塞がって無呼吸、低呼吸状態になり、著しい睡眠障害とさまざまな合併症を招くという病だ。
係長は診断の際、医師に言われた言葉を今でも忘れられないという。
「“一晩で70回は仮死状態になっていますよ”って。何でも、1時間で、無呼吸、つまり10秒間以上息が止まっている状態が100回以上はあった、と。血液中の酸素飽和度が78%まで落ちてしまっている時もあったそうです」
「酸素飽和度」は、新型コロナウイルス感染症の重症度を測る指標の一つとしても用いられている。その場合、「93%を切ったら入院」が基準であるから、酸欠状態が如何に酷かったかが分かる。
睡眠時無呼吸症候群の原因の主たるものは、「肥満」だ。係長も例外ではなかった。
「身長は今も昔も167センチですが、体重は高校を出て上京した頃は55キロ。そこからどんどんデブになって、結婚した頃は70キロ、診断を受けた40歳の時は102キロ。お医者さんからは“痩せなさい”と言われましたけど、私の場合は、この体形自体が“芸風”ですから。無理ですよね」
かくして係長はある治療法を勧められ、症状は劇的に改善することになる。
「いつ死んでもおかしくなかった」
と苦難の日々を振り返るのである。
[2/2ページ]