デビュー39年「原田知世」の変わらぬ本質 椎名桔平、角川春樹氏もそこに惹かれた

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少女性が発揮された役柄

「時をかける少女」が絶賛されたことにより、原田は芸能界に留まった。その後、角川氏が用意した主演映画は「愛情物語」(1984年)、「天国にいちばん近い島」(同)、「早春物語」(1985年)。演じたキャラクターはそれぞれ違ったが、少女性が前面に押し出されているという点は一致していた。

「時をかける少女」からの計4作で原田のイメージは揺るぎないものになった。そもそも原田が少女性を内包していたから、これらの役柄を自然体で演じられたのだろう。原田知世という女優の誕生と角川氏は切り離せない。

 1985年に角川春樹事務所から離れた後に出演した映画「私をスキーに連れてって」(1987年)でも原田独特の持ち味は発揮された。例えばゲレンデの原田が手を拳銃の形にして、それを三上博史(59)に向けたシーンである。直後に原田は「バーン!」と言った。

 よく知られるシーンだが、ほかの女優ではサマになりにくかったのではないか。大人っぽい女優が同じことをやったら、滑稽になってしまう恐れがある。純粋無垢に見える原田だからこそ成立したシーンだった。

 その後の役柄も同じ。原田独特の個性があったから演じられた役ばかり。戦時下、好きな人に告白することが出来ず、その人が特攻に行くことを知って涙する女性を演じた映画「紙屋悦子の青春」(2006年)、大泉洋(48)とパン店を営む夫婦に扮し、訪れる客の心を温めた同「しあわせのパン」(2012年)……。

 同「あいあい傘」(2018年)では、妻子を置いて家出した男(立川談春、55)を家に連れて帰り、そのまま黙って面倒を見て、夫婦同然に暮らす女性を演じた。男には妻子が居て、いつ出ていくか分からないことを知りながら。

 こんな女神のような女性が実在するとは思いづらいが、原田が演じると、不思議とリアリティーが生じる。それも原田が純粋無垢に映るからだろう。

 10月8日からはテレビ東京の新連続ドラマ「スナック キズツキ」(金曜深夜0時12分)に主演する。傷ついた人だけがたどり着き、癒やしてくれる「スナック キズツキ」の店主に扮する。

 これまた現実味の薄い役柄だが、原田が演じることによって、どこかに存在している気にさせられるのだろう。

*1「an・an」2018年10月17日号

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月8日掲載

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