「すれ違い不倫」で年上女性と33年間交際 還暦男が語る“2人の女性の存在”

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離婚には久美さんが反対

 真幸さんはそのとき、久美さんに「もう離婚してもいいと思っている」と話した。だが、久美さんは反対している。子どもたちが帰る家は、両親が揃っていたほうがいいというのだ。それには真幸さんも反論できなかった。ゆかりさんとは「事なかれ主義」のまま外見上は平和に過ごしているが、信頼関係が築けているわけではない。それでも「奥さんが離婚したいと言わない限り、離婚は避けてほしい」と久美さんが言うのだ。久美さんの願いなら聞き届けたいと真幸さんは思っている。

「ただ、私も60歳を過ぎて、これからどうなるんだろうと不安はあります。久美さんのほうが年上だけど、妻と私と彼女、誰がいちばん先に逝くのか。逝かないとしても、いつ重い病気になるかもわからない。私が真っ先にコロッと逝くのがいいのかもしれませんが、こればかりは……」

 老いへの不安と、老いに逆らいたい気持ちとが拮抗するのがこの年代なのかもしれない。とはいえ、年上の久美さんは楽観的で「今と未来しか見ていない人」だという。

「何もかも受け止めるタイプなんでしょうね。老いに抗うわけでもなく、今日を楽しく生きようとしている。コロナがおさまったら海外に行くんだと言って、なぜか突然フランス語をオンラインで習い始めたりもしてる。彼女はいつでも私の半歩先を行っているような気がします」

 姉であり、ときには母のように彼を支えてくれた久美さんのことを「今も20代で会ったときのように新鮮な気持ちで愛しています」と真幸さんは照れながら言う。33年という長い年月を共に闘ってきた同士でもある。

「もし彼女に会わなかったら、私は今のような人生を送れていなかったと思います。ゆかりと結婚したのがよかったのかどうかわかりませんが、少なくともかけがえのない子どもをもつことができた。私の人生では仕事が主軸だったけど、仕事に賭けることができたのも妻のおかげです。妻が私と結婚して不幸だったと思わないですむよう、これからも尽くしていきたいと思っているところです」

 この言葉を妻が聞いたらどう思うのだろう。ふっとそんな思いがよぎったが、夫婦には夫婦にしかわからない機微があるものだ。不倫と言われてしまう恋愛関係のほうが、夫婦関係よりよほどわかりやすいのかもしれない。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月6日掲載

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