岸田政権、実行力が疑われ早くも流れる短命説…最大のがっかり人事は「松野官房長官」

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岸田カラーとは何か

 もう一つ重要なのは、岸田首相が望む政治の姿を実現できるのかです。岸田政治の方向性を一言で集約すると、総裁選直後の記者会見で語った「丁寧で寛容な政治で、国民の一体感を取り戻す」ということでしょう。

 これは「丁寧さに欠け、狭量で、国民を分断させた」安倍・菅政治を修正するということで、まさに岸田氏が率いる派閥・宏池会的です。岸田氏は著書「岸田ビジョン」の中で「宏池会は結成されてから今日まで、その名の通り、リベラルで自由な社会を目指し、権力には謙虚に向かい合ってきた」と語っています。

 私は2014年に、当時安倍内閣の外務大臣だった岸田氏とひざ詰めで将来のことを語り合う機会を得ました。その時、岸田氏が「今は安倍政権を支える身だが、いずれ宏池会的な政治が求められる時が来る。その時に向けて準備する」と、静かに闘志を燃やしていたことが強く印象に残っています。

 今回の人事ではデジタル化の推進や経済安全保障といった、岸田首相が力を入れる政策に有能な若手を抜擢したのはいいのですが、自派閥の宏池会から政権中枢に一切登用せず、岸田氏がこれまで目指し、総裁選でも約束した政権運営ができる態勢になっているのか。チームとして足並みを揃えていけるのかが、今後問われることになるでしょう。

 安倍氏、麻生氏への強い配慮は、岸田首相の「弱さ」なのか、「したたかさ」なのか、岸田派幹部の一人にストレートに聞きましたが、「今回の総裁選はいろんな方にお世話になりました。すべて岸田さんに任せています」と言葉少なに話すのみでした。

総選挙での審判に向けて

 衆議院総選挙まであと1か月あまり。短い期間ですが国民は、岸田首相の本気度をしっかり見極める必要があります。そしてこれから訪れるかもしれない日本の危機にきちんと対応していく実行力があるのか。コロナ後の日本をどの方向に導こうとしているのかきちんと問い、審判を下さなければなりません。

青山和弘(あおやま・かずひろ)政治ジャーナリスト
1968年、千葉県生まれ。東京大学文学部卒。92年、日本テレビ放送網に入社し、94年から政治部。野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップ・解説委員を務める。与野党を問わず幅広い人脈を持つ。本年9月からフリーの政治ジャーナリスト。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月4日掲載

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