昭和の名建築「中銀カプセルタワービル」解体へ 140のカプセルはどうなる?
コッポラ監督やキアヌ・リーブスも
箱が高く積み上がったような外観を記憶にとどめている方も多いだろう。建築家・黒川紀章氏の代表作のひとつ「中銀(なかぎん)カプセルタワービル」は、1972年、「新陳代謝」を意味する「メタボリズム」思想に基づいて建設された。「ゴッドファーザー」シリーズなどで知られるフランシス・フォード・コッポラ監督はプライベートで、また人気俳優で監督業も行うキアヌ・リーブスも自作映画ためのロケハンで、このビルの近未来とレトロが同居する独特の雰囲気に惹かれて訪れたことがあるほど、世界的にも知られている。
【写真】コッポラ監督やキアヌ・リーブスも訪れるほど世界的に知られた名建築「中銀カプセルタワービル」。50年前、近未来的だったカプセル内部ほか
このビルが、解体に向けて動き出した。
多くの人が惹かれる変わった形状は、その構造にある。A棟B棟併せて140あるカプセルは、ひとつひとつシャフト(幹)にある出っ張りにカプセルの下部を引っ掛け、上部をボルトで固定している。建設時は滋賀県の工場でカプセルを作り、トラックで運んできて、下の階からクレーンを使ってシャフトに取り付けたという。独立したカプセルは分譲され、それぞれに所有者がいる。
黒川氏はメタボリズムの思想通り、このカプセルを25年ごとに取り換えることを提唱していたが、交換することができないままに2007年に亡くなった。その後も、一度も交換されることなく老朽化し、今年3月、管理組合で敷地売却が決議されたのだ。
メタボリズムを実現したい
だが、ファンが多い歴史的建造物だけあって、当然、惜しむ声も大きい。現在は保存派のオーナーを中心に、カプセルを取り外して改修した後、国内外の美術館や博物館等へ寄贈したり、宿泊施設として再活用したりしようとする活動が行われている。すでに国内外の美術館や博物館、ギャラリー、企業などから、取り外したカプセルを買い取りたいと申し出があったという。
「2014年、メタボリズム(カプセルの交換)を実現したいと、保存派のオーナーと住人を中心に『保存・再生プロジェクト』を結成しました」
と語るのは、「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」の代表であり、自身も15戸のカプセルを所有してきた前田達之さんだ。
「ビルの建て替え自体は20年ほど前から検討されていました。このままではメタボリズム思想の代表的な建築が失われてしまうと、数年前から国内外のデベロッパーや投資ファンドなどと、ビルを丸ごと買い取ってカプセルを交換してもらえるよう協議を重ねていたのです。海外には、利益を社会に還元したいという会社も多く、このビルを残すことが社会への貢献につながると考えてくださっていました」
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