「ヘパリン配合」スキンケア商品が続々と登場する事情 “処方せん悪用”問題が影響

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医薬品スキンケアは諸刃の剣?

 美容分野での商品開発の経験を持つマーケティングアナリストの渡辺広明氏は、次のように語る。

「ヒルドイドの一件は、まさに現代の口コミ事情を象徴するようなものでした。これまで化粧品各社は、莫大な広告予算を投じて、自社商品を世の人々にアピールしてきました。しかし、もともと化粧水や乳液といった商品は、“効く気がする”という個人の感覚によるものが非常に大きく、本当に効果があるのかは見えにくいもの。そんな分野で、医療用医薬品という、いってしまえば“効果のお墨付き”があるヒルドイドが注目され、一気にSNSに認知されたのです。いま、ヘパリン配合の医薬品を売り出す各社は美容効果を謳えないわけですが、もしかするとヒルドイド同様、SNSの拡散効果に期待しているのかもしれませんね」

 おなじみの「ヒアルロン酸」に取って代わるキーワードとして「ヘパリン」が台頭しつつある、と渡辺氏はいう。一方「医薬品スキンケア」という点では、業界は諸刃の剣をはらんでいるとも指摘する。

「たとえば、自社でいくつか『クリーム』の商品を扱っているとします。ある商品を医薬品として売り出してしまうと、では、医薬品ではないほうのクリームは何なんだ、という話になってしまう。もちろん建前上、こちらは“治療”でこちらは“美容”と住み分けさせることは可能ですが……自社商品の自己否定感は否めません。同じような現象が、かつて『オールインワン化粧品』が流行ったときにもありました。化粧水、乳液、クリームをこれ一本で、というのが売りだったわけですが、では自社のラインナップにある化粧水や乳液などの個別商品の存在意義は?となってしまう。今回、ライオンという大手が参入したわけですが、美容というよりは日用品の会社で、しがらみがなかったのかもしれません。今後、大手の化粧品会社が参入するかというと、なかなか難しそうです」

デイリー新潮取材班

2021年10月4日掲載

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