吉川美代子が語る約30年間の「おひとりさま」生活の快適さ 「ひとり耐性」を身に付ける重要性

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人間関係は変わるもの

 もちろん、誰かと話したくなることはあります。そんな時、私には趣味のジャズ仲間がいる。私より先輩のおばさまから、年下の男の子まで。誰かに連絡して、一緒に食事に行ったり、その後にジャズを聴きに行ったりということがひとり身だとわりと簡単にできるので、誰かと話したい寂しさに悩まされずに済んでいます。

 でも、高齢になると友人や知り合いの訃報も多い。年をとるごとに友人が減っていくのは寂しいけれどこれだけは仕方のないことです。

 人間関係ってその時代その場所で変わります。例えば高校・大学時代の友だちは、30代、40代になると子どもの受験の話、50代、60代だと孫の話。子どものいない私にとってはつまらない。コロナ禍でも、今まで価値観が同じと思っていた人が、あまりに感染対策に無頓着で関係が疎遠になったりもする。67歳の今でも、友だち付き合いは変化しています。

 だから、人間関係が変わることを恐れないでほしいですね。学生時代の友だちも、子どもがひとり立ちした後に、また話が合うようになったりする。人間関係を固定してしまうと、その時々に応じた友だち付き合いができなくなり、孤立を招く元だと思います。

 どうしても新たな人間関係を築きたいなら趣味の仲間を作るのがいいかもしれません。趣味を見つけるコツは「トライ&エラー」です。少しでも興味を持てるものがあれば、ちょっと手を出してみる。気軽にカルチャーセンターなどに通ってみて、自分に合うと思えば続ければいいし、無理そうだったらやめればいい。

 私は日本棋院に通って囲碁を習いましたが、合わなくて入門コースだけでやめました。最近一人で昔のテキスト見ながら打ってますが(笑)。ジャズは40歳くらいから歌い始めて、今も楽しんでいます。好きだからこそ趣味を続けられて仲間ができるのです。

「ひとりで外食すると、周りにじろじろと見られる」。いい年したおばさんに限ってそんなことを言いがちで、ひとりでレストランにも入れない人がいますが、趣味を始めようとしたらひとりで即行動。なによりおひとりさまに備えるのに、ひとりでは何もできないようだと話が始まりません。決断するのも自分ですし、その結果に責任を持つのも自分です。

 また、友人の数が多くても心から信頼できる人間関係でなければ意味がありません。60歳過ぎたら重要なのは友人の数ではなく、その質です。病気になった時など、いざとなったら駆けつけてくれ、手助けしてもらえるような友人を持つ。そのためには、自分も他人に対して誠実であること。「情けは人の為ならず」、まさにこの通り。

 嫌われ者にはおひとりさま生活は難しいと実感する所以(ゆえん)です。

吉川美代子
フリーアナウンサー。1954年生まれ。TBSのアナウンサー、キャスターとして37年間活躍するとともに、2001年からはTBSアナウンススクールの校長も務めた。14年に定年退職し、 フリーランスに。現在も情報番組等に出演している。

週刊新潮 2021年9月30日号掲載

特集「誰もがいずれは独り身に…1億総『おひとりさま』時代に『孤立無援』ではなく『個立有縁』」より

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