吉川美代子が語る約30年間の「おひとりさま」生活の快適さ 「ひとり耐性」を身に付ける重要性
おひとりさまに必要な条件はふたつあると思います。
まずは「ひとり耐性」。
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ひとり暮らしで心までが孤独に蝕(むしば)まれないように、自分の心を満たすことができる豊かな精神を身に付けておかないと、「ひとりで寂しい」と思い込んで心がふさいでしまう。こんな状況ではおひとりさま生活は難しいですよね。
そしてもうひとつは、「嫌われ者であってはダメ」ということ。おひとりさまはひとり気ままな生活なのだから、人に嫌われようが何しようが構わないではないかと思われるかもしれません。でも、他人に媚びる必要はないけれど、何かあった時に助けてくれる人がいたほうが安心です。
恐怖を覚えていたのに快適だった定年後の生活
2度の離婚を経て、私は30代後半からひとり暮らしをしています。当時はTBSの局アナをしていて、2日間徹夜なんてことがザラにあるくらいバリバリに仕事をしていましたから、「今後、ひとり身の私の生活はどうなっていくんだろう」なんてことはあまり考えていませんでした。ただし漠然と、会社に行かず、しわしわのおばあちゃんになり、腰が痛い、膝が痛いと言って毎日病院に通う――そんな老後おひとりさま生活をイメージして、どこかで恐怖を覚えていたような気がします。
そして60歳を迎えて会社を定年退職。実際に定年後のおひとりさま生活が始まってみると……。これがとっても心地よい。
私はインテリアにはかなりこだわるほうでアートも大好き。センスが違う他人と暮らしたら「ここにそんなポスターは飾らないでほしい!」なんて不満が溜まるはずですが、もちろん今は自分の思うがまま。
朝起きたら大好きなジャズをかけ、好きな時に食事をとり、自分のペースでお風呂に入る。私はかなりの長風呂で、入浴時間が1時間だと物足りないくらいです。でも、家に家族がいると、夜中の1時過ぎにお風呂に入るのって、やっぱり気を遣ってしまいますよね。
空間だけでなく、自宅での時間も全て自分でコントロールできる。これがおひとりさま生活の魅力です。こういう生活をしていると、「他人」の余計なものが目に入ってしまう生活にはもう耐えられないのではないかという気がしています。
私が今送っているような生活を快適と感じるためには、ひとりでいても寂しくない準備が必要。これがひとり耐性を身に付けておくということです。
私の場合、例えば「新しいアートをどこに飾ろうかな」と考える時間すら楽しみです。
あとはいい音楽を聴いたり、読書をしている時。本を通じて、自分が体験することのできない時代や人生を追体験できる。物語の中に入り込んで江戸時代の町娘やニューヨークの探偵、イギリス貴族の生活が目の前に広がるのです。自宅でひとりぼっちで読書している姿は、傍(はた)から見れば孤独かもしれないけれど、自分の心は満たされている。
そんなわけで、今の私のおひとりさま生活は、30代後半の時に想像していたよりずっと楽しいものになっています。
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