心の病は食事で改善できる? 精神栄養学の第一人者が語る「最強の食事術」
脳腸相関
例えば肉の脂に含まれているn-6系脂肪酸のアラキドン酸由来の物質は血液を凝固させ、炎症の一因となる。逆に、魚の脂に含まれているn-3系不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は炎症を抑える効果があります。
n-6系とn-3系の摂取比率は4対1が理想とされていますが、「肉食化」が進んでいる現代の食生活では、どんどんn-6系の割合が増えていて、血液がドロドロになり、炎症が起こりやすくなっています。そして、炎症を引き起こすIL-6などの“サイトカイン”と呼ばれる物質が血液を通じて脳に運ばれ、脳が炎症を起こしている状態がうつ病なのです。
また、腸の働きがうつ病に関係することも分かっています。
腸の上皮は、本来人間が食事をした際に必要な栄養素だけを吸収する有能な働きを持っています。しかし、腸内細菌が上手く働いていないと、上皮と上皮の間がスカスカになり、必要な栄養素だけでなく、悪玉菌の成分など余計なものを吸収してしまう。それらの成分によって腸が炎症を起こすと、先のIL-6が放出され、血液を通じて脳に送られてしまうわけです。
こうした脳と腸の密接な関わりを「脳腸相関」と言います。腸内の環境が脳に影響を与えるのです。
ビフィズス菌などの善玉菌は腸の壁のバリア機能を向上させますが、われわれが行った研究では、便に含まれるビフィズス菌の数は健康な人の方がうつ病の人より多いことが見出されました。もう一つの善玉菌である乳酸桿菌の数も同様でした。
また、腸には副交感神経が分布していて、腸内細菌がその副交感神経を活性化させることが分かっています。ストレスを感じている状態では交感神経が優位となり、うつ病では緊張した状態が続いて心身がダウンしてしまうのです。副交感神経を活性化させることで精神のバランスを保ち、リラックスすることが可能となります。
腸内環境を整えることが、うつ病の予防や改善に効果的な所以(ゆえん)です。
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