心の病は食事で改善できる? 精神栄養学の第一人者が語る「最強の食事術」
息苦しい世の中である。外出は憚(はばか)られ、人とのコミュニケーションすらままならない。ストレスフルなコロナ禍において、誰しも心がふさぎがちだ。医食同源。沈み、荒れる精神を癒やすには、食事の改善が有効だという。精神栄養学の権威が、心に効く食事術を紹介。
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現代日本人の食事における問題点は、実はNHKの大河ドラマ「青天を衝け」から学びとることができます。
徳川13代将軍家定、14代将軍家茂が立て続けに世を去り、当初、頑なに就任を拒んでいた慶喜が第15代将軍の座に――。草なぎ剛さんがその「最後の将軍」を演じていますが、彼を将軍にならしめた前代、前々代の将軍の相次ぐ死の原因は「脚気(かっけ)」だといわれています。
脚気、それはビタミンB1の欠乏のために起きる病気で、つまりは栄養不足によるものです。日本においては、江戸時代から脚気が広まったといわれています。
古代や中世に比べれば、江戸時代の栄養環境は改善されていたのではないか。そう思われる方もいるかもしれませんが、13代、14代将軍の頃、江戸では精白米が主流になっていました。それまで食べられていた栄養が豊富な玄米などに比べ、精白米は精製の過程で栄養分を削ぎ落としてしまう。そのため、糖質が含まれた甘みのある美味しいところしか食べなくなった将軍らは、栄養不足に陥っていたのです。
美食を求めて栄養不足を招いてしまうとは何とも皮肉ですが、「玄米と精白米」と同じようなことが、現代の食事のあらゆる面で起きています。そして、このことが心の病にも大きく影響しているのです。
〈帝京大学医学部教授で精神科学者の功刀(くぬぎ)浩氏は、日本ではあまり注目されてこなかった、精神疾患の栄養的側面、つまり食事がうつ病などにどれだけ影響を与えるかという点に着目する「精神栄養学」の専門家である。
心の病であるうつ病等に「食事療法」が効くのだろうかと思われがちだが、両者は大いに関係があると功刀教授は説く。〉
人間が食物を摂取して生命を維持している以上、心の働きや脳の活動にも、当然、食物が影響を与えます。実際、食生活と心の病の関連を指摘する少なくないエビデンスが、海外の学術誌で発表されています。
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