オダギリジョー「オリバーな犬」 辛口コラムニストの高評価と変わらぬNHK不信

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受信料は放送に使え

アナ:民放ではドラマの映画版で収益を狙うことがあたりまえになっていますが……。

林:民放は、電波使用料が安すぎるという問題はあるにせよ、いちおう民間企業だから自分でリスク取ってリターンを求めるのは原則自由。一方、NHKは放送法にもとづく公共機関でその名も日本放送協会なんだから、取り立てたカネは放送に使えよ放送に……という話です。

アナ:「オリバーな犬」評、最初はいい流れだったのに、途中で暗転してしまいました。

林:いや、失礼。劇場版ができたりすると嫌だなというのは、あくまで仮の話だし、実際、公開されたりしたら見に行っちゃうんだけどね。この作品、20年前ならドラマでも映画でもフジが手掛けたろうし、今ならまずNetflixとかHulu、Amazonあたりが配信しそうな出来で、それをなぜだかNHKが放送したところに、ちょっと引っかかってます。

アナ:制作も、NHKエンタープライズとメディアミックス・ジャパン(MMJ)で、このMMJはテレビ朝日傘下の制作会社ですよね。

オダギリ一座に期待

林:そうそう。わりと面白い組み合わせではあるのよ。コロナ不況で民放の連ドラが七転八倒しているなか、“放送公共事業”がドラマに力を入れているのは、制作の現場にはありがたい話だし、視聴者にとっても悪い話ばかりじゃないし、ただ、民放からすれば民業圧迫だろという話もあるしで、まぁいろいろですが。

アナ:林さんにしては“大人な”見方なので驚いています。

林:ホメられてる気が一切しないけれど、ま、「オリバーな犬」の場合、作品の好き嫌いとNHKの好き嫌いは別の話。オダギリジョーにはこの後も引き続き、こういう作品を作り続けてほしいと、切に願うね。

アナ:おお、そこまで!

林:実際、オダギリはすでに自分の一座みたいな座組みを「オリバーな犬」で固め始めているようで、柄本明、橋爪功、永瀬正敏、細野晴臣、川島鈴遥あたりの役者は「ある船頭の話」にも出てます。監督が脚本、編集まで自分でやる一座だから、あとは撮影と音楽、それにプロデューサーが固まってくれば、オダギリ組あるいはオダギリジョー大一座として、映画なりドラマなりの作品を定期的に生み出せるんじゃないかと。

アナ:アメリカだとウディ・アレンがやってきたようなスタイルですね。

林:そうそう。ここからは勝手な妄想だけれど……奥さんの香椎由宇とW主演で大人のラブストーリー、ただしフツーじゃないヤツとかも作ってくれないかなぁ。毎年1本、不思議でおかしい映画を撮って、毎年カンヌ映画祭に招待されるというのは、#MeTooスキャンダルに脚を取られる前のウディ・アレンの仕事のスタイルだったけれど、そんな映像作家が日本から出るとしたら、オダギリジョーかもね。贅沢は言いません、“2年に1本、そのたびに高崎映画祭に”でもいいから。【了】

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月1日掲載

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