新型コロナ、新規感染者急減で注目される「エラーカタストロフの限界」理論
予防効果は接種から4カ月で半減
だがワクチンの感染予防効果には落とし穴がある。英オックスフォード大学が19日に発表した研究結果によれば、ファイザー製ワクチンの感染予防効果は接種から4カ月でほぼ半減し、ワクチン接種者が感染力の強いデルタ株に感染した場合、ウイルス保有量は未接種者と変わらなかったという。また、ブレークスルー感染は症状が軽く、感染そのものに気づきにくいことから、無症状のまま他人にうつしてしまい、クラスターが生じる原因となる。
このことからわかるのはワクチンを2回接種したとしても、感染対策が引き続き欠かせないということだ。コロナのような呼吸器感染症が蔓延しやすい冬場にかけてはなおさらである。
パンデミック以降、マスク生活が当たり前になったが、感染力が強いデルタ株を予防するためにはウレタン製や布製ではなく、不織布マスクの着用を徹底すべきだ。「ヨウ素液によるうがい」も有効だ。ヨウ素液を満たした試験管では、新型コロナウイルスは10秒で不活化する(死ぬ)ことがわかっている。換気対策として1時間に2回程度の窓開けでは不十分であることがわかっており、これに関するてこ入れも不可欠だ。
タミフルのような効果
正念場とも言える冬場が近づく中、「新型コロナウイルスを治療する飲み薬が年内にも登場する」との朗報が届いている。日本を含む世界各国で、米国のメルクやファイザーが軽症者向け薬剤の最終段階の臨床試験を進めている。いずれも体内でウイルスの増殖を防ぐための薬剤であり、インフルエンザ治療で使われるタミフルのような効果がある。
経口だけに点滴タイプの既存の治療薬と比べて投与しやすい上、量産が簡単なことからコストが抑えられるメリットもある。菅首相は25日、「経口薬を早ければ年内にも実用化できる可能性がある」と述べた。「コロナのリスクをインフルエンザ並みに抑えられる日が近い」との期待が高まる。
最後に残された懸念事項は、ワクチンなどが効かない耐性株の出現だ。国内外で新たな変異株が次々と発見されているが、アストラゼネカのワクチン共同開発者であるオックスフォード大学のセーラ・ギルバード教授は、22日、「感染力が強いデルタ株以上に致命的な変異株が登場する可能性はない」と述べた。新型コロナウイルスが人体の免疫を避けるためにスパイクタンパク質を変異させすぎると、これによりかえって人体の細胞に侵入することができなくなる。このせいでウイルスが抗体を回避しながら感染力を強化することには限界があるという説明だ。デルタ株の登場後これまでのところ、デルタ株を凌駕するような危険な変異株は出現していない。
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