新型コロナ、新規感染者急減で注目される「エラーカタストロフの限界」理論

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相次ぐクラスター

 政府は新型コロナウイルス対策として、東京や大阪など19都道府県に発令中の緊急事態宣言を9月30日に解除した。ワクチンの接種が順調に進み、新規感染者の減少傾向が鮮明になっており、自宅療養者数や入院率などの数値も劇的に改善している。

 宣言解除後、政府は日常生活に関する行動制限を段階的に緩和する方針だが、不安の声も上がっている。2回のワクチン接種を終えてからの感染(ブレークスルー感染)によるクラスターの発生が、病院や高齢者施設などで相次いでいるからだ。

 群馬県伊勢崎市の病院では、入院患者17人と職員8人の計25人の感染が判明した。うち24人はワクチンを2回接種済みで、残る1人は1回接種したのみだった。和歌山県高野町の特別養護老人ホームでは、施設利用者12人と職員2人の感染が確認されている(うち1人は重症)。この感染者全員がワクチンの2回接種を完了していた。

約8割がワクチン未接種者

 ブレークスルー感染は海外でも起きている。ワクチン接種完了率が8割を超えるシンガポールでは、感染者が9月に入り急増している。感染者の98%が無症状・軽症にとどまっているものの、重症者数や死者数が増加傾向にあることから、政府は27日、ワクチン接種者に認められる外食の上限を5人から2人に引き下げるなど、行動制限の強化に踏み切った。

 日本でも同様の傾向が見られる。ワクチンによるコロナの発症や入院を予防する効果は8~9割と報告されており、重症化するリスクは低い。国内で発生しているクラスターのほとんどが、軽症又は無症状だ。24日、東京都は「感染拡大第5波で都内で亡くなった人の約8割がワクチン未接種者だった」ことを明らかにしている。

 見劣りするとされる感染予防効果についても、期待が持てる調査結果が出てきている。大阪府が8月29日までの2週間の未接種者と2回接種者の感染割合を比べたところ、30代以下で約12倍、65歳以上で20倍以上の差があったという。厚生労働省も「感染リスクに約17倍の差がある」との見解を示している。

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