金メダル・稲葉監督が明かす「キャプテンを置かなかった理由」 若い世代をマネジメントする術とは

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新聞もネットニュースも見ないように

 野球は結果論でいろんなことが言えるスポーツです。ファンや評論家など、それぞれが“監督目線”で、「こうするべきだった」「あそこがダメだった」と議論する。それが野球のひとつの面白さだと思います。批判も含めていろいろな声が出てくるのは注目されている証しだとも思いますし、有り難いことです。

 でも、そうした意見を見聞きして、現場を実際に動かす“監督”の私が、そこから何か影響を受けることがあってはならない、絶対に左右されてはいけない。なぜなら、自分は自分で、しっかりと考えや信念をもってチームを動かしているからです。

 ドミニカ戦の翌日のスポーツニュースを見ると、やはり継投の面などを批判する声があり、日本は勝ったのに、何だかまるで負けたような感覚を覚える自分がいました。その時、思ったんです。

「あっ、監督である私がこれで流されてはいけないな」

 と。もちろん、継投への批判は受け止めますが、こうしたニュースに身を浸してしまうと身動きが取れなくなり、マイナスになると感じたんです。それ以降は新聞もネットニュースも見ないようにしました。

控え選手のすごい一言

〈ピンチと同時に「雑音」にも動じない。監督のこの姿勢に導かれた侍ジャパンは、2戦目以降も勝利を重ねていく。

 準決勝(8月4日)では宿敵の韓国を5対2で破り、決勝では千賀と甲斐のバッテリーが「苦しいアウト」をもぎとる。なかでも、2度戦うことになったアメリカとの初戦(同月2日)はタイブレーク(延長戦)にもつれこむ激闘となった。

 10回裏、1アウト二、三塁のサヨナラのチャンス。スクイズも予想されるなか、打者の甲斐は打席に入る前に稲葉監督にこう尋ねた。

「打っていいですか?」

 スクイズではなく強行策の選択。監督からの指示を待つのではなく、選手自ら状況を考えてリーダーに判断を仰ぐ。侍ジャパンが「自発的」なチームになっていることを証明した瞬間だった。

 そして甲斐はサヨナラ安打を放つ。〉

 今回のチームは、野球をよく知っている選手が集まっていました。どうしたら点が取りやすいか、どうすれば良い流れを引き寄せられるか。選手みんながそれをよく分かっていた。

 そうやって考えた意見を、いつでも私に言ってきてほしいと選手たちには伝えていました。プレーするのは選手であって監督ではない。監督が動かすのではなく、選手同士がいろいろと考えて試合を動かしていく。それが良いチームだと考えていたんですが、今回の侍ジャパンは本当にそういうチームになりました。

 例えば決勝戦の試合前のバッティング練習でのことです。控えに回り、出番が少なかった(源田)壮亮(そうすけ)、近(こん)ちゃん(近藤健介)、栗原(陵矢)の3人に、「今日も頼むよ!」と声を掛けると、壮亮がこう言ったんです。

「いや、僕たちが出ないほうがいいんですよね」

 控え選手の出番が必要となる試合は緊迫した展開になっている場合が多いことを踏まえてそう言ってくれたわけですが、試合に出たくない選手なんていません。にも拘(かかわ)らず、そんなことが言えるなんてすごい、なんてできた選手なんだと。なかなか言えないですよ。そんなことを言われると、何としてでも選手たちを守ってやりたい、勝たせてやりたいという気持ちになりますよね。

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