「白と黒」二つの時代を経て横綱・白鵬引退 双葉山「後の先」を断念が転換点

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奥義を知る白鵬の“強さ”

 白鵬がまるで不良少年のようにグレたのは白鵬自身のせいではなく、究極を求める白鵬の夢を共有もできず、支援もできなかった相撲界にこそ問題があったと理解する必要もあるのではないだろうか。だとすれば、それは白鵬引退で解決するものではない。日本の相撲界は、場所こそ重ねているが、もはや伝統的な相撲ではなく、勝った負けたの勝負を重ねているだけの空しい興行に落ちぶれていると言われても仕方がない。

 白鵬は、ある一線を越えて奥義をつかんだからこそ、ケガをしてなお圧倒的な強さを誇った。何しろ満身創痍の先場所でも全勝優勝を飾った。照ノ富士にも勝っているのだ。その圧倒的な強さにこそ、本来の相撲の手がかりがあるのは明らかだ。多くのファンやメディアが忘れがちだが、白鵬は決して巨体ではない。ここ数年は力士の大型化が進み、体重がないと勝てないような錯覚が力士たちを支配しているが、白鵬はいたずらに太ってはいない。本物の強さは体重や余分な脂肪に宿るのではない。

 親方となり部屋を開けば、白鵬は強い力士の育成に情熱を傾けるだろう。奥義を知っている白鵬と、明確に道筋を持たない他の親方では、指導の水準も違うのではないか。白鵬の部屋から、「後の先」を体得する力士が輩出されたら楽しみだし、相撲文化復活への期待もふくらむ。日本相撲協会は、「一代年寄の廃止」などという、いかにも白鵬いじめのような改革(改悪)に精を出す場合ではない。白鵬が改めて「白い白鵬親方」となり、愛される相撲界の発展に寄与してほしいと願う。

デイリー新潮取材班

2021年9月30日掲載

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