間男との現場を目撃しても何も言えず、今度は自分が…浮気性の妻をもった主夫のモヤモヤ

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妻の浮気には気づいていた

 純也さんが家事育児をメインに担っていることを除けば、ごく普通の家庭だった。週末は家族で過ごすことが多かったし、夏休みや冬休みには一家で旅行もした。

「だけど僕、知っていたんですよ。聡子が時折、浮気していることを。つきあっているときも怪しいと思ったことはありましたし、彼女はおそらく浮気をしても罪悪感を抱かないタイプだろうなと感じていました。もちろん、妻が浮気してもかまわないとは思っていませんでしたけど、僕に彼女を止めることができるとも思えなかった」

 それは純也さんが彼女に惚れているからでもあるが、「他人の想いを止める権利はない」と考えていたせいでもある。彼はそういう性格なのだ。

「子どもにしつけは大事だけど、大人である聡子を倫理的に説得できるほど僕は偉くないですからね。しかも彼女は自由を何より大事にしているのだから、彼女を止めたり責めたりしたら、きっと逃げられてしまう。そう思っていました」

 それでも気になる。モヤモヤした不安を抱えたままでいるのが苦しい。

こっそりと自宅に帰ったら…

 4年ほど前の夏休みのこと。純也さんは子どもを連れて、自宅から2時間ほどかかる海辺の実家で10日ほど過ごすことにした。聡子さんは仕事があるので、後半の数日間だけ来ると言う。

「そうなったら自宅に男を連れ込むだろうなと思っていました。だから僕、子どもたちを実家に残して、夜、ひとりで自宅に引き返してみたんです。マンションですが、そうっと鍵を開けて入ったら、案の定、玄関に男ものの靴があった。リビングの手前に寝室があるんですが、そこは静かでした。廊下を歩いてリビングに入ろうとしたら聡子の嬌声が聞こえました。やっぱりという感じでしたね。音を立てないようドアを開けたら、絨毯の上で組んずほぐれつの姿が目に入って……。激しかったんですよ、その様子が。聡子は今、別の世界にいるんだろうなと思ったら、なんだかこっちがいけないことをしたような気になりました」

 そうっとドアを閉めて外へ出た純也さん、その日は近くのビジネスホテルに泊まったそうだ。もちろん、聡子さんには何も告げなかった。

 自分さえ我慢すればいいという被害者意識はなかった。なぜなら聡子さんが家庭を蔑ろにしたことはなかったからだ。たまに予定より帰宅が遅くなったり、なぜか週末に出張が入ったりするだけだったし、常に純也さんに感謝の気持ちも伝えてくれた。

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