新番組「THE TIME,」を占う エース・安住アナ投入でも長期戦を覚悟すべき理由
残された課題
過去の番組もそうだった。超が付くほどの人気アナだった久米宏(77)がMCを務めたテレビ朝日「ニュースステーション」(1985~2004年)すら開始第1週目の平均視聴率は8%台。浮上するまでには半年近くかかった。
「THE TIME,」にはほかにも課題がある。T層(男女13~19歳)とF1層(女性20~34歳)をいかに取り込むかである。昨年まで3年連続で朝の情報番組の視聴率1位(民放)の「めざましテレビ」第2部は、T層とF1層の支持が分厚い。T層とF1層が視聴率を牽引している構図だ。
逆に「あさチャン!」はT層とF1層に人気薄だった。9月21日の場合、T層とF1層の個人視聴率は「めざましテレビ」の約3分の1。これが全体の視聴率が上がらなかった最大の理由と見て間違いない。
現在、朝の情報番組を選択するにおいて、最も強い発言力を持っているのはT層とF1層なのだ。視聴率のカウント開始時刻が午前5時50分と早いため、前述した視聴率は「グッド!モーニング」より低いが、実質的には2位と言って良い「ZIP!」もT層とF1層に強い。
今の時代はT層とF1層を制した番組が、朝の情報番組戦争を制すると言って良い。逆に両者にソッポを向かれたら、浮上はまず不可能だ。
「めざましテレビ」と「ZIP!」がT層とF1層に支持されている現状には誰もが納得するのではないか。両番組ともエンタメ情報が豊富。学校や職場で友人や仲間と雑談するための情報に事欠かない。
また両番組とも全体的にポップでも明るい。三宅正治アナ(58)、井上清華アナ(26)、生田竜聖アナ(33)がMCを務める「めざましテレビ」は、「きょうのわんこ」で見る側を癒やし、「めざましじゃんけん」で遊び心を満たしてくれる。
「ZIP!」は10代にも若い女性にも人気の高い水卜麻美アナ(34)が総合司会を担当。さらに俳優の風間俊介(38)らが曜日パーソナリティーとして登場し、朝からスタジオが華やいでいる。おっさん向けで堅苦しかった昭和期の朝の情報番組とは大違い。隔世の感だ。
「あさチャン!」失敗の象徴
一方、「あさチャン!」はマジメ過ぎたのではないか。そんな番組のカラーを象徴したのは「脳シャキ!30秒クイズ」のコーナーである。よく出来た問題ばかりだったものの、慌ただしい朝は頭を使わないで済む「めざましじゃんけん」程度がちょうど良いのではないか。
また、マジメな「あさチャン!」の情報量は一、二を争ったが、男性目線の情報に偏っていた気がしてならない。おっさん目線である。T層やF1層にはしんどかった気がする。視聴率の低かったのはMCの夏目三久アナ(37)のせいではないだろう。
捲土重来を期する「THE TIME,」のコンセプトは「ニッポンの朝がみえる。」なのだそうだ。ネット局と協力して列島中継などを盛り込むという。売り物の1つにするつもりらしい。
ネット局とはいえ、所詮は別会社で、おまけにTBS系列は老舗局が多く発言力が強いから、難作業になるだろう。半面、視聴者を引き付けるかどうかは未知数。なにより列島中継は日本テレビ「ズームイン!!朝!」(1979~2001年)が看板にしており、残念ながら目新しさはない。
またニュースやエンタメ、スポーツなどのさまざまな情報を、テンポよく伝えるという。これは「新・情報7daysニュースキャスター」(土曜午後10時)で鮮やかなMCぶりを見せている安住アナだから、全く不安がない。
取材力も十分過ぎるほどある。特にTBSのエンタメ情報の取材力は古くから民放屈指。ただし懸念されるのは硬軟の情報のバランスや見せ方である。当初はさじ加減に苦労するのではないか。
そもそも視聴者のメーンターゲットをどこに定めるのだろう。これがよく分からない。おそらく、全世代をごっそりと取り込むつもりだろうが、すると中途半端になってしまう恐れがある。T層とF1層は振り向かず、それ以外の層からも敬遠されてしまう可能性がある。
「THE TIME,」が1位になる日が来るかも知れない。だが、長期戦になるのは必至だ。「めざましテレビ」も初めて視聴率1位(民放)を獲るまでには1994年の番組開始から10年もかかった。
厳しい戦いになるのは安住アナも分かっているはず。9月24日の「ぴったんこカン・カン」最終回で、「まだ断ろうとしています」と弱音を吐いたのもうなずける。
もっとも、本気で断る気はなかっただろう。安住アナの存在はもはやTBSのラストマンに近い。局の浮沈が自分の双肩にかかっていることを知っているはずだ。
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